BOSS ONLINE

2015年09月号

「経営者の心構え」

近藤太香巳の 情熱経営塾

パッションリーダーズとは? 近藤太香巳氏が主宰。起業家の応援組織として2011年4月に創設し、定例セミナーを毎月1回開催。人気のビジネスマッチング、アカデミー、すぐに参加できる様々な部会など、多彩なメニューで会員の積極的な成長をバックアップしている。東北、名古屋、大阪、四国、九州に支部を展開し、会員数は約3000人。http://www.passion-leaders.com/

若手経営者をゲストに迎え、ネクシィーズ社長の近藤太香巳氏が講師となって経営相談に答える、パッションリーダーズ×月刊BOSSのコラボ企画「近藤太香巳の熱血経営塾」。19歳で起業し、2004年に当時最年少で東証1部上場を果たした近藤氏は、まもなく社長歴30年。次世代の経営者たちに何を語り、伝えるのか。若手経営者必見の講義です。第3回のテーマは起業編①「経営者の心構え」です。ゲストは、愛商物流の阿部観社長とプラスの花島千春社長です。

近藤 今回は経営者としての心構えをお聞きしたいと思います。起業から現在、そして今後の展望という視点で話を進めたいと思います。まずは起業について、私の経験から言うと、友達と一緒に起業し、成功したという例は非常に少ないです。それこそソニーの井深大さんと盛田昭夫さんのように、仕事の棲み分けができていたらよいのですが、「一緒にやろうぜ」という感覚ではうまくいきません。決して友達経営を否定するわけではないですが、私自身、ベンチャーという言葉もない時代に起業して、銀行もお金を貸してくれない。孤独感のなか、自転車操業で仕事をしていく過程で稼ぐ力、生き残る力を学んだように感じます。

はなしま・ちはる 1980年生まれ。埼玉県出身。高校卒業後、システム会社に入社。2004年、先輩・同僚らと出資し有限会社プラスを設立、創業メンバーとして参加。06年に株式会社プラ スに商号変更。現場でプログラマーやシステムエンジニアをはじめ、プロジェクトリーダー、プロジェクトマネジャー、ITコンサルタント等を歴任し、12年社長に就任。

花島さんは起業家ではないですが、社長というポジションに就くにあたって、心構えはどうでしたか。

花島 私どもはシステムインテグレーションのビジネスを生業としていますが、少し特殊な成り立ちをしています。もともとは、あるシステム開発会社に所属していたなかの21人が出資してつくった会社で、私もそのメンバーの1人でした。先代社長が引退する時に、私に後任の話が来たわけです。経営はSEやプログラマーがやれる仕事ではありません。21人のなかで私は下から3番目の若輩でしたが、ほかに引き継げる人がいないのであれば、自分がやろうと決意しました。

近藤 迷いませんでしたか。

花島 もちろん迷いました。決断の理由になったのは、新卒で入社した若い社員たちの境遇を見たからです。エンジニアは技術がすべてです。仮に会社がなくなった時に彼らがこの業界で生きて行けるのかどうか。いまの環境ではこのまま10年、15年と過ごしていては高い技術が身に付かない。彼らを救えるのは現場の人間だけでは無理なので、上に立って私がやるしかない、独立しても困らない技術を身に付けさせてあげたいと思いました。

近藤 これは起業家ではあまり感じない感覚でしょうね。花島さんはもともとフリーランスの技術者でしたから、その技術者の精神が若い技術者を成長させるきっかけとなり、レベルが上がって、会社にとってもプラスになったのですね。ほかの社員が年上の先輩ばかりという点ではいかがでしたか。

花島 やはり先輩ですので、どういう考えで仕事をしているのか、その人を立てるようにはしています。私自身は、チームの一員として経営の役割を担うポジションだと認識しています。ですから、先輩に対しても言うべき時は毅然とした態度で理路整然と説明します。敬語は使っていますが、私が折れることはないですね。

近藤 阿部さんはドライバー4000人を抱える物流グループのトップですが、まさに体育会系で親分肌の経営者です。起業時に心構えはありましたか。

阿部 実はあまり考えてなかったですね。若い頃、事業をやろうと思ったのは、単純に雇われるよりも自分でやったほうが稼げるという思いでした。最初は自分1人で独立して始めた運送業ですが、売り上げが増えて1人では大変になり、社員を募集して会社としての形が出来上がりました。でも知識がなく、すごく適当なものでした。

近藤 何が変わってからうまくいくようになったのですか。現在は独立採算制の、いわばフランチャイズシステムでドライバーの独立を支援する形に進化していますよね。社員のほうがモチベーションが高まり、利益率自体も高くなると思うのですが、なぜ社員として雇わずに独立を促すようになったのですか。

阿部 自分は会社勤めをしたことがなかったですし、社員を雇ったことも、社員研修すら受けたことがありませんでした。つまり、社員のあり方がわからないのが本当でした(笑)。

近藤 独立したら、経営者なんだから自分で考えろと、丸投げをしたわけですね(笑)。

阿部 当時はそうでした。最初の1年で独立した10人みんながうまくいきました。ノウハウを教えたと言っても、本当に抽象的で、営業に行け、人を入れろ、とかです。彼らはよく成功できたなと思います(笑)。今はもっと掘り下げてノウハウを作っていますし、経営者としての勉強もさせています。

あべ・みつる 1971年生まれ。愛知県出身。愛工大名電高校在学中は硬式野球部に所属。2学年下にはイチロー(現マーリンズ)が後輩にいた。95年名古屋市で起業、飲食店、車両販売などを手掛ける。98年27歳で上京、99年1月軽貨物運送業を個人事業主として開業、8月に愛商物流を設立し、社長に就任。2011年に軽貨物運送の独立開業を支援する東商物流共同組合を設立し、理事長を務める。関東を中心にドライバー約4000人の組織で運営中。

近藤 阿部さん自身はいつごろから勉強心を持ったのですか。

阿部 決算書を意識し始めてからです。5期目に売上高が7億円になり、いろいろ聞かれるようになったのですが、まったく答えられませんでした。独立した社長たちに「粗利って何だ」と聞いても答えられない。それでみんなにPLやBSをしっかり覚えてもらおうと勉強するようになったのです。

近藤 みんな起業した頃はそんなものだと思います。私も正直、まったくわからなかった。朝、太陽が昇り、夜に沈んで、いくら儲かったのかという、ビジネスのロジックが商売の原点ですから。いろいろ知りすぎるよりも、あまりわからない「無知こそ無敵」くらいが丁度よいです。でも、何かブレイクスルーした瞬間があったわけですよね。

阿部 私もそうだったのですが、小銭ができた社長たちが出てきて、遊びに行くようになりました。自分の範疇でやっている分にはいいですが、その範疇を超えて、自分のお金と会社のお金がわからなくなってしまう人間が出てきてしまったのです。そうやって潰れていった人を見て、しっかり足元を見て仕事をするということを伝えなければいけないと感じました。残念なことに、仕事ができる人ほど、女や遊びにはまってしまうのです。

最近はその社長たちをパッションリーダーズに呼んで、いろんな経営者の話を聞かせ、勉強させていますから、創業時とのギャップをものすごく感じます。もちろん、自分自身も勉強していますから(笑)。

近藤 ここからは、経営者として会社をどうしたいのか、未来に対する展望をお聞きしたいと思います。

花島 実は業界ナンバーワンというのは目指していません。弊社は営業力がないほうですので、どう仕事を獲るかと言えば、お客様とのご縁で繋がっています。システムを作り直したい、こういうシステムを作ってほしいといった、相談窓口の1番目に上がる会社にしたいです。

近藤 リピートを高めてコツコツお客を増やしていくという戦略ですね。そのためには、職人的仕事をし、かつ低価格での仕事が求められます。

花島 弊社は牛丼店のように仕事は早い、コストも安い、クオリティは高いのが売りです。お客様先で、当社のような外注業者を表彰するシステムがあるところでは、弊社の技術者は高い評価をいただいています。こうした縁から広がっていければ嬉しいです。

阿部 私は、独立起業した社長が40人いますので、これを100人にしたいというのが一番の目標です。私自身の会社を大きくするというよりも、グループ全体の輪を広げ、起業する人を増やして、フランチャイズの人が働きやすい環境をつくりたい。それが、私も利益になりますし、みんなも喜ぶことかなと思います。

こんどう・たかみ 1967年11月1日生まれ。19歳の時、50万円を元手に会社を創業し、34歳でナスダック・ジャパン(現ジャスダック)へ株式上場。37歳で2004年当時最年少創業社長として東証一部に上場を果たす。プロモーション&マーケティングを駆使したビジネスモデルでグループ10社にまで成長させ、LED照明レンタル事業、電子雑誌出版事業、経営者交流会「パッションリーダーズ」のいずれも日本一の規模を誇る。常に新たな分野へ挑戦し続け、早稲田大学や東京大学・一橋大学などでの講演活動も積極的に行い若者の心を持ち前の情熱でリードしている。JAPAN VENTURE AWARD 2006 最高位 経済産業大臣賞受賞。

近藤 私も自分で決めていることがあります。ネクシィーズは代理店として日本一になってきました。衛星放送では普及率のシェア8割を獲得し、ヤフーBBでは、利用者数約400万人中137万人の契約を当社1社で獲得しました。まさに、当社がいなければ、ソフトバンクはNTTに勝てなかったのです。その勢いもあって、ネクシィーズは東証1部に、当時最年少創業社長という記録で上場しました。何がよかったのかと言えば、スケールがものすごく大きく拡がりました。たとえばヤフーBBにしても、孫正義社長が3000億円を投入している事業に、当社はキーパーソンとして参入できたわけです。ところが、代理店の最大の弱点は、普及したら必要なくなることです。ある日突然、事業が消えてなくなり、必要なくなってしまうのです。私の最大の失敗は、ソフトバンクに依存しすぎたことでした。孫正義社長からは、全身全霊をかけて共に戦ってほしいと言われ、社会的な既得権益をぶっ潰すという目標をかかげて事業に集中しました。途中、同じ思いを持って参画してきた企業は、当社同様に、次々と代理店契約を失っていきました。このとき当社は、年間株価上昇ランキング第2位から、株価下落ランキング第2位まで業績と株価は低迷していきました。一時、アルバイトを含めて5000人以上の従業員がおりましたが、あれだけの人員を抱えるビジネスは、ほかにありませんでした。そこで私は、代理店ではなく、他社に依存しない自社完結型のビジネスモデルで展開しようと決めたのです。

そこで、まだiPadやkindleが日本に上陸していない07年に電子雑誌をスタートさせました。まだ電子雑誌の認識が世にない時代、企画力と営業力で、これまでネットの世界に登場してこなかった、映画やドラマで主役を演じる女優やタレントを起用し、3000施設以上の広告を獲得、現在、11誌まで増やすことができました。今となっては、電子雑誌はメジャー路線になりつつあります。自社完結型ビジネスモデルであり、マーケットの大きいところしか参入せず、そこでナンバー1になれることしかしない。この3つに集中しようと決めたわけです。

花島さんはナンバー1を目指していないと言われましたが、実はリピート率ナンバー1を掲げることができるビジネスです。日本一の山は富士山だと誰もが言えますが、2番目はほとんど知られていません。何でもいいからナンバー1が付くと、誰もが認めてくれます。自分の得意な角度から、ナンバー1を作り上げていけばいいのです。稼ぐ力がなければ、社会貢献もできないし、社員やその家族も守れない。稼ぐ力があってこそのマネジメント能力ですから、阿部さんは非常にうまくいっていると思います。

これから起業を目指す人へ。

起業する際に考えすぎては動けなくなってしまいます。考えてから動くのではなく、常に考えながら動くのです。学歴よりも学力(自分で考える力)、知識よりも知恵(工夫する力)、体格よりも体力・根性が重要です。地に足をしっかりつけて、情熱一心に大空へ飛び出していってください。

「夢は大空へ、努力は足元へ」

2015年09月号 目次

特集ーマツダ・スバルが好き!
マツダとスバル ─ トヨタも羨む〝独創力〟
伝統と革新が紡ぎだす 強烈なアイデンティティがファンをつかむ
先代より大幅〝シェイプアップ〟 受け継がれる「人馬一体」の志
〝レガシィの伝説〟に革命 ─ らしさを詰め込んだレヴォーグ
〝魂動デザイン〟の造形美をつくり出す プレス成型と塗装技術
石の上にも26年 ─ 看板商品になった 運転支援システム「アイサイト」
一般ファンを開拓した 技術力とマーケティング力
インタビュー
PER18倍が20年の目標に 懸念は中国経済の行方
派遣法改正から3年 コンプラ、ウェブの見直しで成長フェーズへ
現場力を引き上げて収益力の回復目指す
保険の基本は死亡保障 女性、経営者に力を入れる
カルピスと完全統合へ 3位アサヒ、かく戦う
戸建て住宅から世界市場まで 130年企業のグローバル戦略
IR CRIP
クラウドワークス
連載
「経営者の心構え」
住宅ローンに苦しむ人を 助ける「任意売却119番」
機能性・利便性とリーズナブルな価格で ビジネスマンのおしゃれを支える
ロボットは、アジアの未来を どう変えるか?
若者の大陸 アフリカ② アフリカ発のモバイル起業家たち