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2015年10月号

ベンチャー企業は 信用力でワープできる

近藤太香巳の 情熱経営塾

パッションリーダーズとは? 近藤太香巳氏が主宰。起業家の応援組織として2011年4月に創設し、定例セミナーを毎月1回開催。人気のビジネスマッチング、アカデミー、すぐに参加できる様々な部会など、多彩なメニューで会員の積極的な成長をバックアップしている。東北、名古屋、大阪、四国、九州に支部を展開し、会員数は約3000人。http://www.passion-leaders.com/

若手経営者をゲストに迎え、ネクシィーズ社長の近藤太香巳氏が講師となって経営相談に答える、パッションリーダーズ×月刊BOSSのコラボ企画「近藤太香巳の熱血経営塾」。19歳で起業し、2004年に当時最年少で東証1部上場を果たした近藤氏は、まもなく社長歴30年。次世代の経営者たちに何を語り、伝えるのか。若手経営者必見の講義です。

第4回のテーマは起業編②「ベンチャー企業は信用力でワープできる」です。ゲストは、終活バンクの石丸裕美社長とリングオフの坂本大輔社長です。

近藤 今回は「信用力」について話を進めたいと思います。すでに活躍をしている起業家が語る従来の連載とは違って、ゲストの2人はネクシィーズが出資をして、これから事業を大きくしていこうという、起業間もない経営者です。まずは両社のビジネスについてお聞きしたいと思います。

石丸 人の終焉に関しての、すべての不安、悩み等、諸々の問題を解決するための「終活BANK」という事業を準備しています。具体的には、生前に準備するエンディングファイル(エンディングノート)や遺言書作成のサポート、明朗かつ低価格なお葬式サービス、その他、弁護士や税理士といった各分野の専門家からのサポートを受けられ、亡くなった後の手続きの代行、生前に大切な方に向けて書いていただいたメッセージのお届け等、ご本人様もそのご家族様も安心してその時が迎えられるよう、人生のエンディングに関する生前・逝去後すべてのお悩みを解消していく事業です。

近藤 いままでは、亡くなってから慌てて家族が役所に行って諸々の手配をしなくてはならず、葬儀などで価格交渉をするような余地はほとんどありませんでした。結果的にものすごく高い金額で行わなくてはならなくなっています。この終活BANKでは、生前から本人が準備し、残された家族の負担もできるだけ少なくすることができるようになります。このビジネスモデルは石丸社長の発案ですが、もともとは彼女が経営していた保険代理店のサービスでやろうとしていたもの。「終活」というキーワードは、いま、ものすごく注目を浴びて、大手企業も参入しているビジネスです。当然、これからライバルも増えていきますから、その前に集中してこのビジネス一本で突き抜けていこうということになりました。ネクシィーズからは14・9%と連結にならない比率で出資し、さらに幻冬舎の見城徹社長も個人で5%を出資。とても期待が大きいビジネスになっています。

もう1人、坂本社長も非常におもしろいアイデアのビジネスを始めています。

坂本 リングオフでは、離婚をされた方の結婚指輪や婚約指輪を買い取るビジネスを行っています。現在、年間約50万人の方が離婚をされていますので、毎年50万個の指輪が、一切不要なものになっている。それを積極的に買い取っていくのです。結婚を失敗した方の指輪ですから、それを再販しても縁起が悪くて売れません。業者に引き取ってもらい、溶かして素材にし、工業用の貴金属や新しいジュエリーとして、また世に出していくことになります。

近藤 このビジネスの面白いところは、その着眼点にあります。実は、指輪を溶かして再加工するような業者はたくさんあります。でもそうした業者は指輪を集めることがなかなかできません。広くライバルを考えれば、買取業者は質屋等たくさんありますが、刻印などがあると高くは買い取ってくれませんから、タンスの中にしまったままになっているケースも多いのです。しかし、ブランドではなく素材として考えれば、「離婚の結婚指輪、買取り専門店」という発想はたいへん面白い。この企業も連結にならない14・9%の株を持つことにしました。ただ、このビジネスは鑑定さえできれば誰でも参入できるというリスクもあります。

さかもと・だいすけ 1980年生まれ。2001年短大卒業後、飲食店等様々な職種で働き、06年ブライダルリングの販売会社に入社。08年に初めての起業。11年高齢者向け訪問医療マッサージ会社を創業し、現在全国90店舗を展開。14年離婚した人の指輪買取りサービスを企画し、15年4月リングオフを設立、社長に就任。

坂本 いま私が考えているのは、アナログなところでの提携を進めていくことです。離婚をされる人の多くは行政書士等にお世話になります。また、新たな出会いを見つけようと婚活のサービスも利用します。こういった企業と提携していきたいと考えています。

近藤 指輪を売りたい人は、いわゆるバツイチですから、将来的には婚活パーティ等を主催するサービスを作ってもいいかもしれないですね。でも、指輪を集めるということに対して考えれば、他社と組むのが良いでしょう。いまのところ、まだ一強になれるだけのロジックが出来上がっていないことを考えると、いきなり大手企業と組むよりも中堅クラスと提携して実績を作り上げたほうがいいですね。自分たちがダントツだという状態になってくれば、大手と提携していくのもやりやすくなると思います。こちらが提携したいと思っても、実績も信用力もなければ相手にされません。そこで、お聞きしたいのですが、2人は信用で何か苦い経験をしたことがありますか。

坂本 私は28歳の時に初めて起業しましたが、その時もジュエリーの買い取りをしていました。当時はスーパー等の入り口にブースを作り、主に主婦層に対してアプローチしたわけですが、スペースを貸してもらおうにも、名前も知らないベンチャー企業には貸してくれません。コネクションのある方を通じてやっと借りられましたが、まったく信用力がありませんでした。

石丸 私は27歳の時に当時の安田火災(現・損保ジャパン日本興亜)に代理店研修生として勤め、3年間の研修を経て代理店としてH&Gを起業しました。研修時代は名刺に安田火災という社名がありましたから話を聞いてもらえましたが、H&Gになると、簡単ではありません。代理店の99%は男性が代表ということもあり、女性に任せて大丈夫なのかと言われ、まるでアウェイのような感じでした。ですから、問い合わせに関して迅速かつ正確に対応し、誠実に、時間厳守といった細かな積み重ねで信用を築いていったのです。

近藤 石丸社長は代理店としても全国トップ10に入る実績を残してきたわけですから、努力と苦労もあったと思います。しかし、再びゼロから終活BANKを起業するということは、新たに信用を得ていかなければなりません。私はネクシィーズを創業して、まもなく30年になりますが、いつもこの信用力という課題に直面してきました。

こんどう・たかみ 1967年11月1日生まれ。19歳の時、50万円を元手に会社を創業し、34歳でナスダック・ジャパン(現ジャスダック)へ株式上場。37歳で2004年当時最年少創業社長として東証一部に上場を果たす。プロモーション&マーケティングを駆使したビジネスモデルでグループ10社にまで成長させ、LED照明レンタル事業、電子雑誌出版事業、経営者交流会「パッションリーダーズ」のいずれも日本一の規模を誇る。常に新たな分野へ挑戦し続け、早稲田大学や東京大学・一橋大学などでの講演活動も積極的に行い若者の心を持ち前の情熱でリードしている。JAPAN VENTURE AWARD 2006 最高位 経済産業大臣賞受賞。

起業した当時から、よいサービスを提供しようと思っても、取引先は3年分の決算書を持ってこいとか、君はまだ信用がないと言って体よく断られた経験が何度もあります。名刺を出すたびに、「何をやっている会社ですか」と聞かれ、「大丈夫ですか?」と言われる。それが激変したのが創業して15年、会社が上場企業になってからです。自分の名刺に上場マークが入った瞬間に世の中が一変しました。何をしている会社か聞かれなくなりましたし、ある会社に少し出資をしてあげると、銀行から1円も借りられなかったその会社が数千万円単位のお金が借りられるようになりました。金融機関は、上場企業が出資するということは可能性のあるビジネスなのだろうという見方をする。単純すぎるように思われるかもしれませんが、世の中の信用とはそういうものなのです。

その意味では、1000ccのクルマを2000ccにすることはできませんが、1000ccのクルマにターボをつけてあげることはできる。ターボの使い方がうまければ、2000ccのクルマにも勝てます。そして企画力と営業力で日本一になったネクシィーズが株主に入ることで、他社に対しても威嚇できます。そういうターボになれるようなことをやりたいと考えて出資を決めました。2人がどれくらいやれるかわかりません。14・9%ならば関連会社にはなりますが、子会社ではないわけですから、上場企業が出資したという信用力を使って自由にやってみてほしいのです。

私は株で儲けようなんていう投資的な考えはありません。ビジネスの発想が面白い会社に信用力を与えてどうなるか。またネクシィーズには企画力と営業力といった武器もありますから、その武器をどんどん使えばいいと思っています。多くの起業家が悩む信用力を、上場企業が出資することでスタート段階から得られるわけですから、うまく利用して一足飛びにワープして成長してもらえたらいいと考えています。

石丸 今後の終活BANKで言えば、認知・周知を進めていくことが非常にポイントになってくると思います。ローカルでは、地元の葬儀社さんが終活セミナーを開いている例はありますが、当社の場合は全国に向けて発信できますので、広告手段やアライアンスについては近藤代表に相談することも出てくると思います。

近藤 どこかを紹介して提携などはできると思いますが、新規開拓は自分でやっていかないとダメですよ。

石丸 もちろんやっていきますが、今回出資していただいた見城社長のように、想像もしていなかった方との繋がりは、通常では得られないものです。

近藤 起業する際、絶対的に必要なのはビジネスモデルです。それを描けていても時間がかかってしまう理由は、やはり資本と信用、そして人脈がないからです。紹介するにしても、相手から「お前、あんなバカなやつ紹介するなよ」などと言われたら、紹介する側も恥ずかしい思いをします。だからこそ紹介してもらうからにはきちんと経営をしてほしいし、責任感も持ってほしい。2人はわかっていると思いますが、使えるものは使ってほしいけれど、おんぶに抱っこでは意味がない。出資した人間が関わってよかったと言えるように頑張ってほしいですね。

石丸 いろんな起業家がいると思いますが、ここまでの私は奇跡的な歩みなんです。実は4歳の時から歌手の郷ひろみさんのファンで、郷さんに会うことだけを生きがいにしてきました。高校生の時にたまたま映画の撮影でお会いしました。今度はもっとインパクトのある会い方をしようと決め、経営者になって事業を成功させて、郷さんにCM出演していただこうと思ったのです。そんなある時に、パッションリーダーズで郷ひろみさんと親しい経営者がいると聞いて……。

(近藤代表、突然テーブルの下で携帯電話をいじりはじめる)

いしまる・ひろみ 1967年生まれ。27歳の時に安田火災(現損保ジャパン日本興亜)の代理店研修生として入社。卒業後、保険代理店H&Gを開業。全国トップ10入賞の常連に。12年頃から脱プレーヤーの思案を始め、終活に関するモデルを構築。15年1月終活バンクを設立、社長に就任。

近藤 あ、ひろみさん?4歳の時からずっとひろみさんのファンという女性経営者が取材で横にいるんですけど、ひと言話したいらしいので聞いてあげてください。

石丸 ※△☆◎◆*…(号泣)。

(石丸社長、憧れの郷ひろみさんと電話で泣きながらご挨拶)

石丸 宝くじよりも確率が低い、お金があってもできないことだからドリームだったんです。保険代理店の社名のH&Gも「ひろみ・ごう」です。終活BANKはこれまでの御恩返しでもありますから、実践していかなければと思います。

近藤 今回は郷さんでしたが、ビジネスでも同じことです。自分が力をつけて、信用ある人に可愛がられたら、突然道が拓けるかもしれない。その人の人脈を使うということは、まずは自分自身が努力し、信用を得なければなりません。でも、それに応えたら、2人はさらにワープできますよ。心から期待しています。情熱一心に頑張ってください。

2015年10月号 目次

特集 40・50・60代——ワンランク上の生命保険
医療・がん・介護・年金……使える保険 傾向と対策
【Plan:1 54歳男性・既婚】完全リタイアまでのリスクを カバーしながら老後の資金づくり
【Plan:2 54歳男性・既婚】基本の医療・3大疾病と外貨建て終身保険で老後対策
【Plan:3 54歳男性・既婚】強いのはキャッシュ─ 3大疾病、介護の対策は一時金型で
医療保険の 定期型と終身型 ―迷ったときは どっちを選ぶ?
【Plan:4 61歳男性・既婚】10年、20年後をイメージしながら オーダーメード保険でリスクをカバー
【Plan:5 61歳男性・既婚】〝手ぶらで〟入院─ 心配いらずの医療保険
定期・終身・養老保険 3つの保険のしくみ
【Plan:6】シングルの老後に必要な 介護保険と医療保障の条件
【Plan:7 48歳男性・独身】介護保険と変額保険 人生を楽しむための 保険活用術
人生設計が 一目瞭然─ キャッシュ フロー表の見方
【Plan:8 48歳女性・シングルマザー】汎用性のある終身保険でつくる 〝ちょっと〟の余裕
【Plan:9 61歳男性・経営者】「法人契約」の基本は 節税しながら、引退資金を貯めること
第2特集 東芝の悲劇
東芝の悲劇
東芝の軌跡
東芝の未来
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好調・中国から、 インド進出へ 「無印良品」の〝ゴーウエスト〟
世界を買えるか ソーシャル・ショッピングサイト BUYMAの海外戦略
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証券コード 東証1部 9551 メタウォーター
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「ファッション性」と「実用性」女性の心を掴む電動バイク
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