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2016年06月号

日本のベンチャーを世界企業に シリコンバレーの流儀

フェノックスベンチャーキャピタル 共同代表パートナー&CEO アニス・ウッザマン

昨年、日本市場に200億円規模の投資を行うことを公表し たシリコンバレーのVC、フェノックスベンチャーキャピタ ル。なぜ彼らは日本に注目し、投資を決めたのか。来日し た共同代表パートナー& CEO のアニス・ウッザマン氏に話 を聞いた

200億円規模の投資

アニス・ウッザマン 東京工業大学工学部開発システム工学科卒業。オクラホマ州立大学工学部電気情報工学専攻にて修士、東京都立大学(現・首都大学東京)工学部情報通信学科にて博士を取得。IBMなどを経て、シリコンバレーにてFenox Venture Capitalを設立。

―― フェノックスベンチャーキャピタルは、シリコンバレーのベンチャーキャピタル(VC)としては珍しく、日本企業への積極的な投資を表明しています。2015年から3~5年で200億円規模の投資を予定しているそうですが、なぜ日本に注目したのでしょうか。

VCはシリコンバレーがメッカで、そこには多くのベンチャーキャピタリストがいます。私は、アメリカ人で日本に来て投資をしている2~3人のなかに入ってしまうほど珍しい存在かもしれません。私にとって日本は、学生の時に勉強させていただいた、大変お世話になった国です。日本では、イノベーションが次の発展へのカギになっていますから、そこで貢献したい。中国企業に投資するよりもリターンの倍率は低いかもしれませんが、お金だけではありません。私にとって恩返しでもあるのです。自分の気持ちの部分で日本に投資活動をしています。

現在の日本企業の多くは第二次世界大戦後に生まれた企業です。ソニーやホンダもそう。ところが、いまはその企業たちの元気がなくなっています。にもかかわらず、新しいブランドも登場していません。最近はソフトバンクや楽天等数社ですが、第二次世界大戦直後は50社、100社と次々にブランドが出てきていました。イノベーションのインスピレーションがなくなるのはよくありません。だから我々のような投資家が入って企業が育つ環境をつくっていかなくてはいけません。

ここは強調したいのですが、昨年だけで、我々は日本のベンチャー企業に24億円の投資をしました。投資家が第一に入れているのは資金、キャピタルです。でも、シリコンバレーには次のようなコンセプトがあります。マネー+アドバイスはスマートマネー、マネー+ノーアドバイスはダンブマネー(dumb money)です。シリコンバレーのVCはスマートマネーですから、投資をして、そして投資をした会社たちを育成しています。次のトヨタを作るにはどうすればいいか、どう手を打てばいいかを考える。フェノックスはグローバルに活動していますから、このネットワークを使ってベンチャー企業を次のトヨタ、ソニーに導きたいというのが目標です。

―― 投資先について、どのような分野に注目していますか。

現在は幅広い分野に投資をしています。IT、ヘルス、モバイル、ソーシャル、クラウド、ビッグデータ、IOT、ロボット、フィンテック。これに加え人工知能や仮想現実といった次世代のテクノロジー。技術系ですね。

「お金だけでなく育成も手伝う」とアニス・ウッザマンCEO。

―― 具体的に投資をしている企業にはどういったものがありますか。

最初に紹介できるのはテラモーターズ。EVの二輪車と三輪車を作っています。私が思うには、この企業が次のトヨタになり得ます。彼らは当初、日本で展開していましたが、二輪車、三輪車が最も使われているのは東南アジアです。そこで東南アジアに展開してがんばっているのですが、この企業はメイド・イン・ジャパンの意識が強く、徳重徹社長もしっかりしている方で、もっと伸びてくるでしょう。私も投資してアジアのマーケティングや、買収の手伝いなどをしてきました。

次にマネーフォワードという企業です。パーソナル・ファイナンスや中小企業の会計ソフトをクラウドで立ち上げています。フィンテックという分野では、日本はこれまでなかなかイノベーションがなかった。大手銀行に業界が縛られていたんですね。そこに入ってきたのがこの会社です。辻庸介社長はこの分野の経験とともにアメリカで学んだ経験もあり、英語も流暢でグローバルにビジネスを考えています。彼らとともに海外展開できないか探っているところです。

3番目にディー・エル・イー(DLE)です。ここは13年3月に上場していますが、フェノックスにとって、日本で初めての投資先でした。彼らは「鷹の爪」というキャラクターや「東京ガールズコレクション」を持っている会社です。DLEの椎木隆太社長には、逆にいまフェノックスが投資する際に相談に乗ってもらうなど、アドバイザーとして迎えています。

ほかにも、昨年8月に上場したメタップス。佐藤航陽社長はスタートアップ業界の歴史に残るくらい優秀な人物です。そしてフィンテック企業のZUUも急成長しています。冨田和成社長は野村證券出身で大手企業の経験を活かしながらフィンテックの大きなメディアをつくっています。こういった企業に我々は投資をしています。

日本はもっと自己主張を

―― 日本ではフィンテックが流行り始めたところですが、世界に対して戦っていけるような企業が出てきそうですか。

マネーフォワードを例に挙げれば、東南アジアには彼らのような企業はありません。日本人はきめ細かく、インターフェースを作るのが上手いです。マネーフォワードのUX/UI(ユーザーエクスペリエンス「体験」とユーザーインターフェース「接点」)は大変すばらしく、どこの国でも使えるようなものになっています。

―― 日本発のサービスが海外で受け入れられるようになると。

マネーフォワード、テラモーターズが成功例になるでしょう。彼らは世界と戦える能力を持っている。何より勇気を持っている人が必要です。アントレプレナーシップやイノベーションの波を大きくし、起業家を育てるには、もっと仕組みを整えなくてはいけません。政府にも責任があるし、大学にも責任がある。このあたりがうまくまとまれば、伸びていきます。

―― 仕組みという面で、具体的にどう改善すればよいのでしょう。VCを日本市場に目を向けさせることにもなると思いますが。

いま韓国や欧州、イスラエルを見ると、国として自国の市場はすばらしいと宣伝できています。たとえばシンガポールでは、海外のVCが入ってきた時に、マッチングプログラムを持っています。日本では、そのような制度はまだありません。何かのプログラムがあって、投資が魅力的に感じられ、私たちのような事例を使ってうまく宣伝していけばいいと思います。海外のVCから日本を見ると、お金を入れたとして本当に返ってくるのか不安なんですね。東証は世界で4番目の大きな市場で、マザーズというベンチャー企業向けの市場を持っています。それがまったく宣伝できていない。誰も知らない。どうやってイグジットできるのかわからないから、VCが日本に入って来ない。きちんと伝えていければ、アメリカのベンチャー企業でもマザーズに上場したいと考えるところが出てくるはずです。

―― 日本のベンチャー企業に対する注文はありますか。

日本はまじめなアントレプレナーが多いです。一生懸命にやっています。教育レベルや社会教育のレベルが高く、まとまっている人が多いですね。加えてアニメーションやゲームといったユニークなものも持っている。ハードウェアの技術が高く、ロボットなども強みをもっています。

しかしながら、マーケティングがうまくない。いい商品を作っても、それをうまく見せなければ売れません。一般的に言えば、日本人には主張ができていない人が多いです。それは根本的に小さい時からの教育からきていると思います。アメリカでは、小さい時からプレゼンテーションをします。いかに伝えるか。日本の教育にはそれがなく、ほとんどの方がシャイ。日本のエンジニアが発表する能力を持つと、たくさん企業が生まれてくると思います。日本のスタートアップには高い技術を持った人が少なくなる傾向にあります。エンジニアは学校で研究室に閉じ込められて、自己主張できないし発表できない。ビジネスセンスが高くないです。だから東大京大を出ても起業に繋がらない。ここは改善していかなければいけません。

日本は進んでいる国ですので、世界で通用するプロダクト、テクノロジーを作ってほしい。おそらく日本の大学や研究機関に技術が隠れていると思います。発表しないから研究室のなかで死んでしまう。もっと世に出して、大学発ベンチャーという形で会社を作ってもらいたい。

もう一つ、企業を大きくしようと思えば、最初からグローバルで考えなくてはいけません、フェノックスや他のVCのようなグローバルパートナーが必要です。うまく国内と国外のものを取り入れて構成していかなければ、会社が大きくなった時にパートナーがいない状況になってしまいます。我々をもっとうまく活用してもらえれば、それだけでポジティブだと思います。

2016年06月号 目次

試し読み
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日本のベンチャーを世界企業に シリコンバレーの流儀
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