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2016年06月号

あなたは後払い派? 今払い派? 先払い派?熾烈! カード会社の キャッシュ争奪戦

デビットは普及するか

日本人は保守的なので預貯金比率が高く、海外に比べて株式投資比率が低いことはよく知られているが、同じようにキャッシュレスよりも現金のやり取りを好む。表②にあるように、カード社会の国として突出している韓国は別格としても、日本のカード利用率が他国と比べて低いことは一目瞭然だ。

もちろん、少額決済ではプリペイドである電子マネーカードの普及でずいぶんと小銭をやり取りするシーンは減ってきた。一方、インターネット通販の浸透もあり、アマゾンや楽天などのECサイトでクレジットカード(以下クレカ)決済することも日常風景となっている。世代交代が進んでいくにしたがって、日本でも今後、カード決済比率がジワジワと上がっていくことは間違いない(もっとも大手家電量販店のように、クレカ決済よりも現金払いのほうにポイント還元を手厚くしている業界もあるが)。

ただし、電子マネーは誰でもすぐに持てるが、クレカを持つには事前に審査が必要だ。今後の加速する高齢社会を考えると、リタイアして仕事を持たず、年金暮らしをする人たちにとって、新たにクレジットカードを持とうとした場合のハードルは高い。また、現役の人は現役の人で、後払いのクレジットカードでは気が大きくなりやすく、使い過ぎてしまうといったことも多いだろう。

では、先払いの電子マネー、後払いのクレカの中間を埋める〝今払い〟はないのかというと、ある。それがデビットカード(以下デビカ)だ。しかしながら、市民権を得ている電子マネーやクレカに比べて、デビカは認知度も利用率も低いというのがこれまでの実態だった。その中で、Visaのデビカが本格的に日本でスタートしたのは、ちょうど10年前の2006年。先駆けたのはスルガ銀行でその後、楽天銀行、ジャパンネット銀行、イオン銀行などが展開(右上の表①を参照)している。

ただし、利用度が高いとは言えなかったため、デビカという存在自体も忘れられかけていた。ところが、今年に入るとソニー銀行、追うように住信SBIネット銀行がデビカ付きキャッシュカードを発行し、さらに今秋を目途にセブン銀行(同行の場合はVisaでなくJCB)も発行するという。

こうした新興、ないしネット専業銀行は、メガバンクと比べれば預金金利や手数料の優遇などもあり、ネット銀行の口座数や預金量は毎年、右肩上がりで増えている。特に、ネット銀行の中で預金量が多いソニー銀行や住信SBIネット銀行がデビカ市場に参入してきたインパクトは小さくない。また、コンビニATMの利用で圧倒的なセブン銀行も存在感は大きい。もっとも、セブン銀行の場合悩ましいのは、仮にデビカの利用が高まった場合、必然的にATMの利用が減ってしまう点は他行と事情が異なる。また、デビカ自体にも一長一短がある。まず、今払いで即時引き落としとなるため、クレカと違って審査がなく、リタイアしたような人はもちろん、低年齢層の人でも持てる。

それ以上に、ここへきてのデビカ参入ラッシュは、日本人の利用シーン向上の狙いはもちろんだが、急増を続ける訪日外国人の存在も大きい。最近、政府はこうしたインバウンドを東京五輪が開催される2020年に倍増の4000万人まで引き上げたい意向を表明したが、クレカ、デビカ両方が浸透していけば、訪日外国人の一層の消費喚起が見込める。

実際、ワールドワイドな全世界ベースのVisaの取り扱い比率を見ると、デビカ57%、クレカ43%と、デビカのほうが構成比では上回っている。それだけ、海外では日常的にデビカが利用されているわけだ。

目下、デビカ付きキャッシュカードで最も力を入れているのはソニー銀行(カード名はSony Bank WALLET)といっていい。同行はもともと外貨預金の品ぞろえやサービスに強みがあった。通常、デビカを海外で使うと代金が円建てに換算されて円預金口座から引き落とされる仕組みだが、ソニー銀行のデビカは外貨預金の強みを利して、ドルやユーロ、豪ドルなど、円以外に10種類の外貨普通預金を引き落とし口座として使え、現地通貨の引き出しもできる。

プリペイド型も攻勢

クレジットカード、電子マネーに続いてデビットカードの発行も増え、カードはお得感を競って戦国時代に。

また、デビカの良さは即時引き落としなので、お金の管理をしやすいことにもある。女優の上戸彩さんを起用した、VisaデビットのテレビCMをご記憶の方も多いだろう。そこでソニー銀行ではこの4月から、簡単かつ安全にお金の管理がしやすいよう、スマホ向けアプリ(スタートはアンドロイドOS向けのみで今夏、iOS版も投入予定)もリリースした。

これは円普通預金、外貨普通預金の残高や取引履歴の照会が行えるだけでなく、為替レートを日本円に換算する「レート電卓」機能を搭載。外貨が不足した際、不足分を円普通預金の残高から自動両替して支払う「円からアシスト」という機能を利用すると、外貨利用総額も表示される。加えて、ログイン方法もPINコード認証やパターン認証だけでなく、アンドロイド6・0以上の指紋センサー付端末であれば、指紋認証だけでサイト画面が表示される。

一方で、デビカが普及していくにはいくつかの課題も。まず、利用加盟店が増えることは大前提だが、そのほかの面では、ポイント還元などのお得感をどこまで向上させていけるかという点がある。すでに電子マネーやクレカの場合、どのカードを使えばどのくらいポイントが付いてお得なのか交通整理が難しいほど、提携カードや提携ポイントが入り乱れている。デビカにももちろんポイント還元はあるが、人気の高い電子マネーやクレカに比べると、お得感はまだまだ相当見劣りする。

もう1点は、デビカを導入しているメガバンクが現時点では三菱東京UFJ銀行だけで、あとは準メガのりそな銀行が導入しているのみ(年会費無料が多い中で両行は会費が必要)なこと。残るメガのみずほ銀行、三井住友銀行の足並みが揃わないと普及に弾みがつかない。

なぜなら、相当な数の人が、給与振り込みや光熱費等の引き落としなどでメガバンクを使っているからだ。つまり、みずほ銀行や三井住友銀行が主力口座になっている人たちは、デビカを使おうと考えたら、前述のソニー銀行などのデビカ対応銀行に口座を開設し、生活資金をそちらに振り向けないと使えない。

また、デビカ同士でも争奪戦は激しさを増している。前述したように、セブン銀行は今秋、デビカ付きキャッシュカードをJCBブランドで発行予定だが、同カードには電子マネーの「nanaco」機能も付く見込み。セブン銀行のライバルであるイオン銀行も、やはりJCBブランドでデビカ付きキャッシュカードを今春発行(すでにVisaでは発行済み)し、電子マネーの「WAON」機能を付けた。前述のSony Bank WALLETが、海外出張の多いビジネスマンや外貨投資に積極的な人に向いているのに対し、こうした流通系デビカは主婦や学生などに支持されそうだ。

このほか、最近は「A N A VISAプリペイドカード」といったマイルを付与してくれる汎用タイプのプリペイドカードも登場しているほか、「ドトールバリューカード」や「モスカード」「スターバックスカード」といった外食チェーンのプリペイドは、自社でしか使えないという汎用性のなさをカバーしようと、ポイント還元を3%~6%の幅で高く設定し、顧客囲い込みツールとして攻勢をかけている。

こうして、後払い、今払い、先払いの舞台でカード同士が熾烈な争奪線を繰り広げつつ、現金社会の日本も徐々に変貌していきそうだ。

2016年06月号 目次

試し読み
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