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2016年07月号

生まれ変わった新生VAIOの デザインと品質を支える「上流設計」

VAIOビジネスユニット3 ユニット長 宮入 専

かつてはソニーの一部門だったパソコン「VAIO」が、新会社になって間もなく2年。 販売台数は激減したが、VAIOらしさはむしろ増した。 そのVAIOらしさの根底には、「上流設計」という独自の思想があった。

デザインと機能の両立

パソコン「VAIO」が生まれて来年で20年になる。

1997年にソニーが満を持して発売した初代VAIOは一世を風靡した。電池を内蔵したヒンジや、青みを帯びたメタリックな色など、既存のPCとは一線を画したスタイリッシュなデザインは、「ソニーがPCをつくるとこうなるのか」と、一瞬にしてファンの心を捉えた。

ソニー時代からVAIOの設計を担当してきた宮入専ユニット長。

しかし、一定のシェアを獲得することはできたものの、数を追う戦略がうまくいかず、2000年代後半にはVAIO事業は赤字に転落。テレビとともに、ソニーのエレキ不振の元凶と言われるまでになった。やむなくソニーはVAIO事業売却を決断、新しい株主のもと、一昨年7月1日、VAIO株式会社が、長野県安曇野市に誕生した。

全盛期には、VAIO事業部には1000人を超える社員がいた。一方、新会社は240人でスタート。ソニー時代には年間1000万台を目指したこともあったが、いまでは数を追わず、VAIOの価値がわかる人に、VAIOらしい商品を届けることで、確実に利益を出す経営へと大きく舵を切った。その効果が、ここにきて出始めている。

「ソニー時代は営業が別組織でしたが、いまでは一緒のため、お客様との距離が比べものにならないほど近くなった。その分、お客様の気持ちがつかめる。それが次の商品にもつながります」

と言うのは、VAIOビジネスユニット3 ユニット長の宮入専さんだ。宮入さんは93年にソニーに入社、一貫してノートPCの設計に携わってきた。

その宮入さんによると、VAIOの魅力は次の3点になるという。

「①高密度回路基板設計②高信頼機構設計③高い無線通信性能――の3つです。PCは2000点の部品からなり、5600本の配線があります。これをミクロン単位で調整して、できるだけコンパクトに収める。こうしてスペースが空けば、過熱防止用のファンや大型バッテリーを配置できる。さらに機構設計をしっかり作り込むことで、薄くても強度ある躯体を実現する。たとえば接着剤の種類と場所を変えることでボディの厚さを0・1㍉薄くできる。これによって一段とスタイリッシュなデザインになる。加えてVAIOは、初期の段階から通信モジュールを組み込んでいたこともあり、通信品質には自信を持っています」

長野県安曇野市生まれの最上位機種「Z」には「MADE IN AZUMINO JAPAN」の刻印が。

「アズミノブランド」

このような機能面での強みを最大限に発揮するために生まれたのが、「上流設計」というプロセスだ。

「VAIO発売当初は、開発は東京のソニー本社で行い、製造以下を安曇野で行っていました。それを10年前に『タイプT』を開発した時に、製造、品証、調達、サプライチェーンの機能が揃っている安曇野で開発も行うようにしたのです。ここから上流設計が始まりました」

上流設計では、商品企画の段階で、開発担当者だけでなく、調達や製造、品質保証、アフターサービスなど、全工程のエンジニアが参加する。

従来のプロセスでは、試作品ができたあとで不具合が見つかり金型を作り直したり、製造工程にしわ寄せがくることもあった。しかし上流設計では、企画段階で各工程のエンジニアが加わり、製造工程や品質保証段階の作業も加味した企画ができあがる。しかもデザインレビューの段階で製造評価シミュレーションを実施することで、あらかじめ不良発生要素を取り除き、作業性、確実性、信頼性が向上する。こうしたプロセスによって、VAIOは試作から量産まで、スムーズに流れるようになった。

「ソニー時代に上流設計を始めておいてよかった。いまでは社員1人ひとりにこの思想が浸透しています。そのおかげで、デザインが決まった時には量産までのメドを立てることができるようになりました。新会社として独立したいま、仮に試作後、金型を作り直すようなことになれば、それだけで巨額なコストがかかってしまいます。さらには発売スケジュールにも狂いが生じる。上流設計のおかげで、そのリスクを避けることができるのです」

本社工場では、流れ作業ではなく「セル生産」でVAIOを製造している。

こうやって生まれたのが、最上位機種の「Z」だ。Zは、企画開発から製造、品質保証を経て出荷にいたるまでの作業のすべてを安曇野で行っている。その証として、Zには「MADE IN AZUMINO JAPAN」の刻印が刻まれている。

他の「S11」「S13」といったシリーズは協力工場で製造されているが、そのすべてをいったん安曇野で受け取り、点検を行っている。同社では「安曇野フィニッシュ」と呼んでいるが、これにより初期不良はそれ以前に比べ激減したという。量ではなく質を追うVAIOにとって不可欠な作業ということなのだろう。

ソニー時代のVAIOは個人ユーザーが中心だった。しかし新会社になってからは、法人需要が主となっている。しかしそれでも購入者の多くが求めるのが、「VAIOらしさ」なのだという。

「購入した人が、VAIOを手にすることでやりたかったことに可能性を感じられる。そして使っていいじゃないかと感じてもらえる。そうした期待に応えていけるパーソナル・コンピューティング・デバイスがVAIOです。そしてレスポンスにしても、キーボードのタッチにしても、使って『快』を感じることができる。それを貫いていきたい」

2016年07月号 目次

試し読み
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生まれ変わった新生VAIOの デザインと品質を支える「上流設計」
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