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2016年09月号

ブロックチェーンに関する誤解と可能性

沖田貴史 SBI大学院大学 特任教授

おきた・たかし 1977年石川県生まれ。98年一橋大学在学中に、サイバーキャッシュ株式会社(現ベリトランス株式会社)の立ち上げに参加。2005年から10年間、代表取締役を務め、香港上場やアジア展開を加速。2016年5月より、SBI Ripple Asia株式会社 代表取締役。主な公職に、金融審議会専門委員など。

ブロックチェーンは、FinTechの中核的技術の一つであり、耳にする機会も多いと思う。一方で、概念的な技術でもあり、一言で説明するのは容易ではない。その結果、誤解も少なくない。

今回は、なるべく技術的な用語を使わずに、ブロックチェーンについて解説するとともに、よくある誤解もご紹介していきたいと思う。

さて、ブロックチェーンは、暗号通貨ビットコインの基盤となる技術である。

従来、金融機関においては、1つの台帳を大型コンピューターシステムで、集中的に管理してきたが、ビットコインにおいては、複数の台帳に分散して、取引記録を保存している。台帳が複数あるため、取引が発生した際には、それぞれの台帳を最新のものに書き換える必要があるのだが、ビットコインでは、一斉通知された取引情報について、それが正しい取引であり、不正操作等がないかというのを皆で見届け、監査・確認をしたのちに、取引を完了するという仕組みを取っている。そのような取引履歴は一定時間ごとにブロック化され、そのようなブロックが、時間とともにチェーン状に繋がっていくため、その名前がついている。ブロックチェーンの技術面での革新性は多岐にわたるが、既存の仕組みと、決定的に異なる点は、台帳が分散していることである。

ただ、分散台帳システムの中には、分散技術ではあるものの、台帳の構築・管理方法が異なるものもある。

また、取引の改ざん防止法を工夫することで、取引を早く簡便に行えるようにしたものもある。これらは、技術的な厳密性でいうと、ブロックチェーンとは異なる亜流の仕組みであるが、決して劣っているという訳でない。先に述べたように、革新の本質的なところは、分散技術であるからだ。

ただ、分散技術という名前は、一般に馴染みがない上に、技術的な要素も強いため、便宜上、ブロックチェーンと呼ぶ場合も多い。つまり、ブロックチェーンは、分散金融技術の一つであるにもかかわらず、その総称として呼ばれているわけである。これは、シャンパンと発泡性ワインの関係に似ている。つまり、産地にかかわらず、炭酸の効いたワインを、シャンパンと呼んだとしても、いちいち目くじらたてて訂正することはないだろう。同じように、厳密な技術要件にかかわらず、分散技術をブロックチェーンと呼ぶことも少なくないというわけだ。

結果として、それが誤解を生むケースもある。例えば、皆で正しい取引を承認するという仕組みのため、ビットコインでは、取引が完了する際には、約10分の時間を要する。ただし、分散技術の中には、瞬間的に完了するような仕組みも少なくない。

ビットコインを源流とするブロックチェーンだが、その用途は決して暗号通貨だけではない。他の金融分野への応用はもちろんだが、スマートコントラクト等と呼ばれる契約や登記等の情報管理に活用することも可能である。

一方、分散技術にも得手不得手はあり、決して万能ではない。特性を見極め、活用することが肝要である。

2016年09月号 目次

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ブロックチェーンに関する誤解と可能性
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