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2017年02月号

活況だった世界最大のECの日 アジアにおけるフィンテックの未来

沖田貴史 SBI大学院大学 特任教授

おきた・たかし 1977年石川県生まれ。98年一橋大学在学中に、サイバーキャッシュ株式会社(現ベリトランス株式会社)の立ち上げに参加。2005年から10年間、代表取締役を務め、香港上場やアジア展開を加速。2016年5月より、SBI Ripple Asia株式会社 代表取締役。主な公職に、金融審議会専門委員など。

11月11日、毎年恒例の世界最大のEコマースの日が、やってきた。1の数字が並ぶこの日は、中国では「独身の日」(光棍節)と呼ばれ、数年前からバレンタインデーに対抗し、Eコマースの一大セールが行われるようになった。

セールの中心地であるアリババグループのB2Cモールである天猫(T-mall)における2016年の流通総額は、15年比32%増の1207億元(約2兆円)と、これまでの増加ペースからは一服したものの、日本のアマゾンや楽天の1年を1日で超え、米国最大のECの日であるサイバーマンデー(34.5億米ドル)の約5倍という活況であった。

世界最大のECの日というのは、即ち世界最大のFinTechの日でもあるということができる。というのも、独身の日セールは、中国のほとんどのECサイトで行われているが、T-mallに限らず、多くのサイトでの決済は、やはりAlipayがほとんどを占めるからだ。

つまり、Alipayの取引も、1日で2兆円近くに上るということである。しかも驚くべきは、最初の1時間で5000億円に達したということである。これは、おそらく世界の金融取引において、最も短時間にトランザクションが集中した事例であろう。

実は、既にAlipayは、件数ベースでは、既に銀聯を抜き、アジア最大の金融インフラとなっている。それを実現する高い技術に支えられている訳だが、それであっても、短期間に取引が集中するのは、インフラ事業者として、極めて難易度が高い。

数年前に当時のAlipay CTOとランチミーティングをする機会に恵まれた際に、このような高い取引負荷に耐えられる秘訣を聞いてみたことがある。その時の回答は、「金融だからといって、特に奇をてらうことなく、一般のWebサイトで活用されている負荷分散技術を活用し、なるべくシンプルさを維持し、それを愚直なまでに徹底することで、圧倒的なスケールを実現している。」ということであった。

また、もう1つの特徴は、モバイルである。16年の独身の日の取引のうち、実に80%がモバイル経由での取引だったということである。

中国でいうモバイルとは、即ちスマートフォンである。つまり、スマートフォン決済が、最も多く行われた日と言っても良いだろう。

一方で、独身の日の直前に、アジアで大きく話題になったのは、もう1つの超大国インドである。

11月8日の夜、インドのモディ首相が、テレビ演説を実施し、突然インドの高額紙幣である1000ルピー札(当日のレートで、約1600円)と、500ルピー札を無効にすると発表し、4時間後に実際に利用を停止した。

このような強硬策を行った背景としては、インドでは偽造紙幣が蔓延しており、それがテロ資金にまわったり、インフレの原因になっていたりするため、それを根絶することがあった。

この発表を受け、インターネット関係者からは、この政策は、結果として、インドのFintechを加速させるのではないかとの声も相次いでいる。

詳しくは次号で触れるが、1997年のアジア通貨危機の韓国が参考になるはずだ。

2017年02月号 目次

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