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2017年03月号

インドが高額紙幣を廃止 押し寄せるキャッシュレスの波

沖田貴史 SBI大学院大学 特任教授

おきた・たかし 1977年石川県生まれ。98年一橋大学在学中に、サイバーキャッシュ株式会社(現ベリトランス株式会社)の立ち上げに参加。2005年から10年間、代表取締役を務め、香港上場やアジア展開を加速。2016年5月より、SBI Ripple Asia株式会社 代表取締役。主な公職に、金融審議会専門委員など。

先月号でも、ご紹介したように、昨年11月8日の夜、インドのモディ首相が、テレビ演説を実施し、突然インドの高額紙幣である1000ルピー札(当日のレートで、約1600円)と、500ルピー札を無効にすると発表し、4時間後に実際に利用を停止した。

旧紙幣は、12月30日までの間、新規で発行される2000ルピー札と、新500ルピー札への交換が可能だが、新紙幣への交換は、1日4000ルピーまでに制限されており、また預金引き出しも1週間に2万ルピーまでという金額制限があるため、直後は銀行やATMに大行列ができ、パニックとなった。

このような強硬策を行った背景としては、インドでは偽造紙幣が蔓延しており、それがテロ資金にまわったり、インフレの原因になっていたりするため、それを根絶するということであった。

事実、インドでは、現金による決済が主流であり、資産としてもタンス預金が多かったという。この発表以来、経済活動が円滑に回らなくなり、特に現金使用率が高かった地方・農村部では、個人消費が大きく落ち込んでいるという報道も目立つ。ただ、高額紙幣は、賄賂や闇資金の温床となりやすく、これらを一旦、全て銀行に預けることで、資金の透明性を増し、各種不正に加え、脱税等を防ごうというのが狙いだ。

この発表を受け、インターネット関係者からは、この政策は、結果として、インドのFinTechを加速させるのではないかとの声も相次いでいる。事実、オンライン決済大手のPayTMでは、新規利用者が従来の5倍に急増しているという。

思い起こされるのは、韓国である。1997年のアジア通貨危機の際に、韓国では、IMFの管理下で小規模店舗の脱税を防止し、徴税率を高めるため、クレジットカードの取り扱いを推奨する政策を出した結果、日本を上回るキャッシュレス社会に移行したという事例がある。

また、中国でも、2002年に銀聯が設立された後、カード決済が急速に普及し、現在ではAlipayなどのモバイル決済も普及し、日本を上回るFinTech大国になりつつある。

一般にキャッシュレスというと、米国のイメージが強い。事実、私の友人でも、数ドル程度の支払いであっても、現金を使うことは稀だという。ただし、それでも米国のカード決済比率は約40%であり、既に50%を超える韓国や中国に追い越されている。

筆者が所有する1000ルピー及び500ルピー札。残念ながら既に紙くずとなってしまった。

インドのやり方は、あまりに乱暴な手法であり、日本では決して行えないだろう。しかし、日本のキャッシュレス比率は、約20%と世界でも最低水準である。大きな契機となるであろう2020年を見据えた改革が望まれる。

2017年03月号 目次

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