有料購読サービス終了のお知らせ

BOSS ONLINE

2017年04月号

目指すは次世代総合商社 ボーダレスのネットビジネス

直井聖太 BEENOS社長

なおい・しょうた 1980年生まれ。2005年明治学院大学経済学部卒業後、ベンチャー・リンク入社。08年BEENOS入社。13年取締役を経て14年社長CEOに就任。

BEENOSが展開するサービスで、現在もっともよく知られているのが「ブランディア」だろう。BEENOSのEC事業の1つ、デファクトスタンダードが展開するブランディアは、女優の菜々緒さんが出演するテレビCMで飛躍的に認知が高まっている。しかし、BEENOSの主力事業は「転送コム」をはじめとしたクロスボーダーEC(越境EC)であり、日本国内と海外の橋渡しをするサービスをグループ数社で展開している。また新興国をはじめとした海外のインキュベーション事業も積極的に展開しており、その事業範囲に国境はない。昨年10月にはマザーズから東証一部に市場変更し、さらなる飛躍を見据えている。BEENOS社長の直井聖太氏に今後の事業展開について話を聞いた。

新たな企業ビジョン

── 「ブランディア」のテレビCMはインパクトがありました。認知度は飛躍的に高まったのではないですか。

そうですね。国内でサービスを提供していますし、いまや社名のデファクトスタンダードよりサービス名のブランディアのほうが、知名度が高くなっていますね。

── 07年に持株会社に移行し、14年にネットプライスドットコムからBEENOSに商号変更をして、グループ全体の事業内容が徐々に変化していったように感じます。

もともと、BEENOSに商号変更してから、私ども自体がプラットフォーム・フォー・ザ・ピープルとして、事業を行ってきました。プラットフォームと言っても、様々な切り口がありますので、どの分野にフォーカスしていくかを改めて見直しました。やはり「日本と世界を繋ぐプラットフォームの創造」こそが、私どもが踏み出していくべき姿だと考え、現在の新しいビジョンとして掲げています。

英語にすると「Neo-General trading company」(次世代総合商社)という書き方をしています。旧来、日本と世界を繋いでこられたのは総合商社の方々です。江戸時代から国を開いて日本と海外を繋げていく存在が必要になった時に、商社は生まれています。日本は島国ですので、様々な〝壁〟がありました。「言葉の壁」や「物価や為替の壁」、「輸入リスクや物流の壁」、こうした壁を商機として、壁を越える専門家的な存在として流通を拡大してきたのが総合商社なわけです。僕らが考えているのは、より21世紀型にインターネット・テクノロジーを駆使し、ボーダレスに日本と世界を繋ぐプラットフォームを創造する「次世代総合商社」を目指しています。

もう1つ、日本の人口動態の変化がビジョンの背景にあります。私たちは8年前から輸出を手掛けるようになりましたが、この着想は日本の人口動態を見て、衝撃を受けたからです。

「BEENOSが海外市場に出ていくのは当然」と直井社長。

── 少子化、高齢化でいびつになっていますね。

それでは、どうやってもいまの社会システムを維持できません。私はこの会社に入る前は、中小企業向けのコンサルティングに就いていましたが、多くの企業が構造不況に陥っていました。人口が減っていくなかで、そのマーケットが伸びるわけがないという前提で提案をしなければならなかったのです。しかし、ふと隣に目を向ければ、ものすごいアジアの成長がありました。特に当時は中国の成長が著しかったですから、アリババをはじめ多くのネット企業が伸びてきていたのです。しかし、中国、台湾、韓国も人口動態はいびつです。東南アジア、インドは国民の平均年齢が20~30代前半で、非常に活力があります。中国の経済成長を追いかける国々が東南アジアから出てきた。日本は、その活力を取り込むことで、次の成長エンジンにすることができると感じ、それをインターネットを使って取り込もうと事業を作ってきました。ですから、BEENOSでは日本の市場にこだわらず、海外の市場に出ていくのは必然です。

── もともとはネットプライスで国内EC事業が始まったわけですが、現在の事業の収益的な柱というのは、移ってきていますね。

弊社の場合、ビジネスによって売り上げ形態が違うので、例えば手数料で収入を得たり、商品の販売そのもので売り上げを立てているものがあったりと利益率等では比較しにくい。1つの指標として流通総額を出していますが、そこでは一番の主力はクロスボーダー事業で、日本の商品を海外で売る、逆に海外の商品を日本で売る、両方を行っています。この分野を作っていくことで、輸出を増やすというところに取り組んでいます。

── クロスボーダー事業の「転送コム」が急激に伸びてきつつありますね。

事業会社のtensoでは日本のECサイトの商品を海外に転送する「転送コム」と海外居住者の代理で商品を購入する「Buyee」の2つのサービスがありますが、海外発送数では国内ナンバーワン規模になっています。もともとこれらの事業は08年から12年くらいまで右肩上がりの成長を続けてはいたのですが、大きく跳ねるということがありませんでした。それが13年のアベノミクス以降、ぐっと数字が伸びてきたのです。単純に為替の変動で海外から日本の商品を買いやすくなったことが挙げられますが、それはきっかけにすぎません。そもそも日本の商品に対する関心や興味が強かったところに円安で買いやすい環境ができて広がったのだと思います。もし仮に円高になったとしても、一時的にマーケットは小さくなるかもしれませんが、それは流れのなかの誤差の範囲でしょう。本質は円安ではなく、アジアの経済が成長してきた結果、日本のものを買いやすくなったことにありますので、長いスパンで見れば、さらに伸びていくと考えています。

── 確かにインバウンドはアジアを中心に年々増え続けています。

円高になった時に訪日旅行客の消費額が減って、やはり円安のおかげだったのではないかと言われましたが、訪日客数では前年比超で成長しています。単純に使えるお金が日本円にした時に減っただけで、流通総額では人民元ベースで見ると増えていたり、消費量自体は減っていないことがわかります。逆にポジティブに捉えることができました。

よく東京五輪の効果とも言われますが、これも本質的には関係ないと考えています。アジア各国が成長して、海外旅行に行きたいという時に、日本という非常にユニークな国があるわけですから、そこに行ってみたくなるのは当然でしょう。だから外資系ホテルが大きなホテルを建てて攻めてきている。こうした攻めは10年後、20年後を見据えての投資ですから、五輪に関係なく訪日旅行客が増えつづけるというのは、世界的な同意ができていることなのだと思います。

民泊事業にも参入

── そんななかで、昨年12月に民泊のベンチャーであるメトロエンジンに出資をしました。この真意はどこにあるのでしょうか。

実は民泊については、Airbnbが出てきた3~4年前からずっとウォッチしてきました。2つ懸念があって、国が規制緩和を受け入れてくれるのか、もう1つは訪日旅行客が本当に増えるのかということです。この懸念が払拭されたので、出ていこうと。メトロエンジンに出資をして、事業に関しても一緒に進めていこうと戦略的に提携パートナーとして選ばせていただいた。彼らはAirbnbのデータの提供を受けている会社と提携して、いままでの価格データをすべて持っています。民泊のオーナーになろうとすると自分たちの物件がいくらくらいで貸せるのかわからないですよね。その価格データをダッシュボード化して見ることができるツールを提供しています。また、彼らはスウェーデン企業と提携し、騒音の問題などがあれば直接ユーザーに連絡が行くIoTグッズの展開権も持っています。民泊運営をするのに必要なサービスを開発していて、すでに持っている。一緒に伸ばしていくことで、もっといい形ができるのではないかと考えました。

── 従来のビジネスと民泊では、異なるビジネスのように見えます。

もう1つ、クロスボーダー事業のシナジーという面もあります。Airbnbばかりに目が向きがちですが、中国にはAirbnbより物件数が多いマーケットプレイスが出てきているんです。今後はいろんなところがC2Cのサービスを出してくると予想されますので、Airbnbだけではビジネスチャンスが小さくなっていくと考えると、いろんなマーケットプレイスに同時に出品していくことが必要になります。そうしたところに活用できるツールの開発も進めていきたいと思っています。Airbnbだけじゃないというのはポジティブなことで、値付けにしても春節の時は値段を高めにして中国メディアに出したり、アメリカや豪州向けにはAirbnbのほうがよいかもしれない。時期によって値段を変えながら調整して出品することで、利益の最大化が図れるようになると考えています。

菜々緒さんを起用したCMで認知度が急上昇した「ブランディア」。

国内はリアル流通網を構築

── 国内事業について、注力している点はありますか。

いまはモノセンスという会社を強化していきたいと思っています。この会社はもともとネットプライスにあった部署なのですが、タレント等とコラボして、商品を企画、展開をしてきた会社です。タレントから派生してアニメのコラボ商品も増えてきています。現在は某有名アーティストと組んで、グッズの製作からコンサート会場での販売まで、ここではネットもリアルもすべて手掛けています。中には自社で動かれるプロダクションもありますが、しっかりマーケティングをして商材を企画し、販売することができず、収益の最大化ができていないケースもあるかと思います。こうしたコンテンツホルダーと一緒になって企画・流通・販売という一気通貫を国内ではやっていきます。ここで力を入れるのは、国内のリアル店舗の流通ネットワークです。ここを押さえた先には、海外展開に持っていくことができます。海外との結びつきもネットだけでなくリアルを含めて流通を作っていっているのが現状です。

── ブランディアについてはいかがですか。

認知度は高まってきたので、次のフェーズは、年齢層は少し高い方が多いので、もっと若い方に使ってもらうことは必要かなと考えています。いま中古の買い取りをしている他社さんの決算を見た限りでは苦戦されているところが多いようです。円安になった時に、中国の方が買い漁ってしまった。新品は作ればいいのですが、中古品は在庫に限りがあって、海外に商品が出て行ってしまったぶん、流通量が減ってしまったわけです。中古の商材は海外に行くと消えてしまって国内市場には戻ってこないことがわかりました。

ブランディアは、実はみなさんがイメージされている高級ブランド品が主軸ではないんです。もっとカジュアルなファッションでも買い取ります。ですから若い世代の方も、衣替えの季節になったら意外と値段が付きますから、送っていただければいいと思います。高級ブランドだけだと、流通量がなければダメになってしまいます。単価の低い商材でも利益が出るようなオペレーションの形ができていますから、そこが強みです。

── 昨年10月には東証一部に市場替えもして、何か変化はありましたか。

より大きく社会的に意義のあることをして、成長していく必要があると思いました。東証で鐘を鳴らしたあと、ほっとしたのもつかの間、妻から「次の戦いのゴングが鳴ったね」と言われまして(笑)。もう一段、責任は重くなりましたけども、よりアグレッシブに成長していける会社になりたいと思っています。

(聞き手=本誌編集長・児玉智浩)

2017年04月号 目次

試し読み
旅行業を軸に多角経営が加速 М&A推進で年商1兆円狙う
目指すは次世代総合商社 ボーダレスのネットビジネス
パナソニックが持ち込む デジタルカメラのイノベーション
IR CLIP ホープ
絵コンテ事業でトップ企業 スマホ、ネット広告代理店で IPOに向けてばく進中
米国移民政策の変更がもたらす インドのイノベーション