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2017年04月号

米国移民政策の変更がもたらす インドのイノベーション

沖田貴史 SBI大学院大学 特任教授

おきた・たかし 1977年石川県生まれ。98年一橋大学在学中に、サイバーキャッシュ株式会社(現ベリトランス株式会社)の立ち上げに参加。2005年から10年間、代表取締役を務め、香港上場やアジア展開を加速。2016年5月より、SBI Ripple Asia株式会社 代表取締役。主な公職に、金融審議会専門委員など。

先月号では、インドの高額紙幣利用廃止政策が、インドのFinTechやキャッシュレス化を加速させる可能性について触れたが、今回は米国新政権の移民政策が、インドのイノベーションを後押しするかもしれないという可能性について言及したい。

米トランプ新大統領が、選挙戦において、移民抑制政策を打ち出したのは周知の事実だが、就任直後の1月末に、イスラム圏を中心とする7ヵ国からの渡航者を制限する大統領令に署名し、混乱が巻き起こっている。

空港周辺でのデモ活動だけではなく、世界の有識者からも抗議が寄せられている。シリコンバレーにおいても、抗議の動きは激しく、例えば自身もロシア系移民であるGoogleの共同創業者であるセルゲイ・ブリン氏は、サンフランシスコのデモに参加している。

デモに参加しないまでも、SNSに抗議のメッセージを投稿する経営者も多い。例えば、企業向けビジネスストレージを提供するBox社のアーロン・レヴィCEOや、Netflixのリード・ハスティンCEO は、Twitter上で大統領名も出し、痛烈に批判している。

また、民泊大手のAirbnbは、足止めを食らってしまった方々に、無償での宿泊を提示している。日本からも、楽天・三木谷浩史社長がTwitter等に英語で投稿し、対象7ヵ国ユーザーに自社の国際電話サービスの無償提供を宣言した。

これらの背景には、カリフォルニアのリベラルな気風だけではなく、移民に支えられているというシリコンバレーの実態がある。つまり、シリコンバレーの強みは、世界中から資金だけでなく、人材を集め、イノベーションを生み出し続けていることにある。とりわけ、インド出身のエンジニアは、このエコシステムに大きく貢献している。

前述のGoogleの現CEOは、インド出身であるし、シリコンバレー以外でも、マイクロソフトやMasterCardのCEOもインドの出身である。

実は、新政権に移行する前からも、外国人エンジニア向けの労働ビザ(査証)は課題であり、ハイテク産業は、発行基準緩和を求めていた。

解決策の中には、サンフランシスコ沖に、船を浮かべ、そこで開発を行ってはどうかというアイディアもあったくらいだ。したがって、今回の措置は、到底受け入れられるものではない。

ここで、私が着目するのは、現在、シリコンバレーで活躍するインド出身者が、母国に戻り、事業を開始する可能性だ。

これまで、インドにおいて、学業成績が優秀な人物は、インド工科大学を卒業し、アメリカ企業で働くというのが、いわばエリートコースであった。

現在、それらの人物が母国に戻り始め、イノベーションを牽引している。今回の7ヵ国にインドは該当しないが、今後の移民政策によっては、この動きが加速するのではないかと考えられる。

モディ首相のリーダーシップに加え、現在、シリコンバレーの第一線で活躍するインド人エンジニアが母国のイノベーションに、より一層参加するとなれば、インドが米国・中国とともに、FinTechイノベーションの牽引役となる日も決して遠くないはずだ。

2017年04月号 目次

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