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2017年06月号

IR CLIP テラ

証券コード:東証JASDAQ スタンダード 2191

すい臓がん治療に新たな選択肢~ 保険適用を目指す〝樹状細胞ワクチン〟のトップランナー企業

国民の2人に1人が生涯のうちに罹患し、3人に1人が死亡する、がん大国の日本。国立がん研究センターの予想に基づくと、2016年に新たにがんと診断された人の数は100万人を超えたとみられる。

中でも、難治性がんの1つ、すい臓がんを主な適応疾患に想定し、「樹状細胞ワクチン療法」の研究を続け、再生医療等製品としての薬事承認取得を目指しているのがテラだ。17年3月から、承認取得へ向けた動きに弾みがつく医師主導治験が和歌山県立医科大学で始まった。テラは連結子会社のテラファーマを通じ、治験製品の供給で参画している。05年に医療機関へ樹状細胞ワクチン療法の技術やノウハウの提供を開始。それ以来、現在は全国37の医療機関で実施している自費診療で積み重ねた全がんにおいての1万1010例に及ぶ症例実績(16年12月末現在)をバックに、治験で確実に効果を確認し、承認を申請したい考えだ。効果的な治療法の開発が急務だったすい臓がんに効果が期待されるほか、他のがんに対しても、身体への負担が少ないがん治療法として普及してゆけば、患者にとって朗報となる。

がん治療の新たな可能性を切り拓く、樹状細胞(写真提供:東京慈恵会医科大学)

免疫細胞ががんを狙い撃ち

樹状細胞ワクチン療法の最大の特徴は、自分の細胞が基になって作られている点だ。患者の血液から「単球」という細胞を取り出し、樹状細胞へと育てると同時に、がんの目印である「がん抗原」を覚えさせる。その上で、皮内注射で体内へ戻す。体内では、がんを攻撃するTリンパ球が樹状細胞によってがんの目印を教えられると、がん細胞を狙って攻撃するようになる。正常な細胞は傷つけない。

「樹状細胞ワクチン療法の最大のメリットは、自分の細胞を使うことで、ほとんど副作用がない点が挙げられます。まれに、注射をした部分が発赤したり微熱が出ることがありますが、これは正常な免疫反応で、がんに対しても反応しているサインと考えられます」(矢﨑雄一郎・代表取締役社長)

標準療法の1つである抗がん剤は、正常な細胞も傷つけてしまうほど即効性に優れるが、やがてがん細胞が薬剤耐性を持つようになるなどし、長期の薬効は望めない。一般的に副作用も強い。一方で樹状細胞ワクチン療法では、効果の発現までに多少時間はかかるものの、一度効き始めると、長期にわたりがん細胞を攻撃し続ける。そのような特徴から、抗がん剤に樹状細胞ワクチンを併用することで、治療効果が期待される。他の標準療法である放射線や手術と組み合わせることも可能だ。

医学専門誌『癌と化学療法』に掲載の論文によれば、樹状細胞ワクチン療法を実施したすい臓がん患者11人のうち2人が、腫瘍完全消失が4週間以上持続する「完全奏功」となった。「部分奏功」「安定」を含め6人(55%)に何らかの効果が表れた。

5年後の承認申請が目標

今年3月、和歌山県立医科大学ですい臓がんに対する樹状細胞ワクチンの治験がスタート。山上裕機教授を中心とする第2外科は、国内のすい臓がん治療で実績を持つほか、大学としても国内トップ級の免疫治療経験があることから、今回の治験を主導することになった。

「私たちから先生にご相談に上がり、強い関心を持っていただきました。すい臓がんをターゲットにしたのは、有効な治療法が少ないことと、患者の7割近くは発見された時には進行がんに移行しており、仮に手術をしても大半が再発します。がん全体の死亡率が減る中、すい臓がんはこの25年間で1・5倍になり、なおも増加が見込まれています。非常に予後の悪いがんなのですが、少しでも明るい、新しい選択肢を患者さんに提供したかったからです」(矢﨑社長)

治験への参加には病状などの条件が決まっており、まずは和歌山県立医科大学に相談することが必要だろう。ただ、今後和歌山県立医科大学が中心となり治験を実施する医療機関を拡大することも想定されるので、かかりつけ医との情報を密にしよう。

テラではこの治験開始に合わせ、連結子会社のテラファーマが神奈川県川崎市殿町地区ライフイノベーションセンター内に「殿町細胞プロセッシングセンター」を設けた。センターでは、医療機関で採取された患者の単球を基に樹状細胞の培養などを行う。

今後は、22年の薬事承認申請とその後の速やかな上市を目指しており、樹状細胞ワクチンの製造販売企業として、成長を目指すほか、予防医療への応用も視野に入る。

「がんに〝なってから〟より〝なる前〟に対策を打ったほうが理論的に良いことは間違いありません。若いときの元気な単球を採取し、冷凍で保管するサービスも検討しています」(矢﨑社長)

矢﨑社長は、外科医の臨床経験を持つ。有効な薬や治療法を開発し、助かる命を増やすその熱い思いが、大きく前進する。

2017年06月号 目次

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