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2017年09月号

FinTech(金融科技)大国としての中国

沖田貴史 SBI大学院大学 特任教授

おきた・たかし 1977年石川県生まれ。98年一橋大学在学中に、サイバーキャッシュ株式会社(現ベリトランス株式会社)の立ち上げに参加。2005年から10年間、代表取締役を務め、香港上場やアジア展開を加速。2016年5月より、SBI Ripple Asia株式会社 代表取締役。主な公職に、金融審議会専門委員など。

2017年7月8日・9日の両日にかけて、上海において開催されたFinTechに関するカンファレンスに参加する機会を得た。

 ややアカデミックな色合いが強いものであったが、大学や政府系研究者の他、大手金融機関の経営者に、アリペイなどのFinTech企業も含む幅広い参加者に加え、各国の政府関係者や邦銀等を含むグローバルな参加者の姿も目立った。

 当日の上海は、35度を超えていたが、 このFinTechカンファレンスも、今回が既に4回目を迎えるというだけに、登壇者も汗を拭うシーンが見られるほどに、熱い議論が行われた。

 初日の基調講演では、フィンテックの沿革を、中国3000年の歴史になぞらえたものから始まった。漢代の「算盤」や宋代の「交子(世界史上初の紙幣)」などのように、金融の発展に欠かせない技術を生み出してきたという説明は、「FinTechは、決して新しいものではない」という言葉に重みを加えるものであった。

 講演者の口から語られるのは、ビッグデータやクラウド、ブロックチェーンにAIといった世界のFinTechシーンにおいて、頻出する言葉が多かったが、中国ではFinTechは単なるバズワードや未来のサービスではなく、既に数億単位のユーザーを抱えるサービスが、幾つも存在し、日常に根ざしているという自信が窺われるものだった。

 その代表格であるアリペイは、FinTechではなく、「テック・フィン」という言葉を使い、インターネット企業が金融サービスに進出したことにより、これまでの金融事業者が対象としていた法人や富裕層といった顧客(全体の20%程度)だけでなく、個人に代表される残りの80%も利便性のサービスが受けられるようになったという意義を語り、その価値観を世界に輸出していくという気概に満ちていた。

 これまでは急拡大する中国市場に特化する戦略を持つ企業が中国には多かったが、FinTechについては、グローバルな競争が加速している。事実、2日目は、世界各国からのゲストを中心に、議論も英語で行われていたが、世界の規制当局の多くも、FinTechが持つ潜在的な脅威について認めつつも、可能性を探っていくべきだという前向きな議論がなされていた。

 議論がもっとも白熱したのは、やはり仮想通貨とブロックチェーンであった。正直なところ、他の分野に比べると、議論の成熟度は、まだまだこれからだなという印象を受けたが、ICOなど最新のトピックスについても、関心の高さが再確認された。

 個人的に驚いたのは、Rippleに関しては日本の取り組みを含めて、認知度が高いということだった。公開の場でも、度々話題に上ったが、特に登壇者だけでのディナーの席では、内外為替一元化コンソーシアムに関しての深い調査に基づく、高度な議論に驚いた。

 そのコンソーシアムだが、7月に三井住友銀行、ゆうちょ銀行の両行が参加し、61行まで広がった。次なる目標は、商用化である。ブロックチェーンを未来の技術でなく、現実のソリューションとする。日本が世界のリーダーとしていきたい。

2017年09月号 目次

試し読み
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生田正治