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2017年10月号

ビットコインの分裂騒動と顛末で 見えてきた想定外の進化

沖田貴史 SBI大学院大学 特任教授

おきた・たかし 1977年石川県生まれ。98年一橋大学在学中に、サイバーキャッシュ株式会社(現ベリトランス株式会社)の立ち上げに参加。2005年から10年間、代表取締役を務め、香港上場やアジア展開を加速。2016年5月より、SBI Ripple Asia株式会社 代表取締役。主な公職に、金融審議会専門委員など。

ビットコインの分裂騒動が世間を騒がせた。その結果として、8月にハードフォークと呼ばれる分岐が行われ、従来のビットコインに加えて、「ビットコインキャッシュ」と呼ばれる新たな通貨が生まれることになった。

事の始まりは、ビットコインの処理能力の限界である。元々、ビットコインは、取引の承認に、いわゆるマイニングという手法をとっており、約10分ごとに1つのブロックを作り、その中に数千件程度の取引を格納している。

ただし、ビットコインの普及が進む中で、取引が増加し、潜在的な課題として抱えていた処理能力不足が表面化した。

これを解決すべく、処理性能をあげる試みが顕著になったのは2017年の春からである。それまでも、様々な方法が試みられていたが、一部のグループからBitcoin Ultimatedと呼ばれる従来にない新たな仕組みで拡張性の向上を図る案が提案された。

この手法は、ブロックのサイズを大きくすることで、処理能力を増やす仕組みであり、効果は高い一方で、従来のシステムとの互換性を有しないハードフォークという仕掛けであった。

強引な手法に反対するグループが考え出したのがSegWitという手法である。これは、ブロックの大きさは変えないものの、1つのブロックに入る取引の数を増やすことで、処理能力の向上を図るソフトフォークと呼ばれる穏健な手法である。ただし、SegWitについては、獲得報酬が下がることなどを嫌気したマイナーが反対し、分裂騒ぎが始まったということである。

その後、SegWit2xという新たな手法も提案されて、さらなる混乱が起きた。詳細は割愛するが、すったもんだの末にSegWitで合意がなされ、一件落着と思われたものの、それに納得しないグループがハードフォークを起こしたのが、冒頭のビットコインキャッシュである。

上記のような二転三転の混乱のなかで、浮き彫りになったのは、ビットコインのガバナンスに関する課題である。これまで、ビットコインは、国家などの特定の権威に依存しないため、各国の中央銀行が自由に通貨発行量を管理することができず、ガバナンスに強いと言われていた。

ただ、この一連の騒動の中で、マイナーや取引所等の利害関係者の政治的な駆け引きが明らかになった。本来の強みであった点に対して疑問符がつき、また消滅の危機すらあるとの不安から、ビットコイン価格も乱高下することとなった。

一方で、8月に入り、心配されたハードフォークもスムーズに分岐し、また取引価格も急回復している。その結果、本来分裂時には、価値が分散すべきものが、元値以上に上昇する結果となった。

個人的に注目するのは、発行総量が定まっていることで、対インフレ性が高いとされていたビットコインの発行総量が、結果として増えることが可能になった点である。これは、発明者であるサトシ・ナカモトも、想定しなかった進化(ないしは退化)を遂げていると解釈することもできよう。

2017年10月号 目次

試し読み
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