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2017年12月号

これからは「第3の創業期」 鍵は日本的な世界観の再提案

佐藤 章 湖池屋社長

さとう・あきら 1959年6月27日生まれ。東京都出身。82年早稲田大学法学部卒。同年キリンビールに入社。97年キリンビバレッジ商品企画部部長代理、2008年キリンビール営業本部マーケティング部長、11年九州統括本部長、12年キリンビールマーケティング執行役員九州統括本部長を経て、14年3月キリンビバレッジ社長、16年5月フレンテ(現・湖池屋)執行役員マーケティング担当、日清食品ホールディングス執行役員菓子事業担当、同年9月末より現職。

新生「湖池屋」の挑戦

── 昨年10月、まず社名をフレンテから湖池屋にし、その後、新CIロゴマークを導入。さらに今年2月には新商品の「PRIDE POTATO」の投入と、新しい施策の連打という感じでしたが、新生湖池屋についてどう考えましたか。

CIロゴを変えるきっかけになったのは、小池会長から、「社運を賭けて〝新生湖池屋〟を作りたいんだ」というお話をいただいたことです。湖池屋の、第1の創業期はポテトチップスを量産すること、いわば普及期ですね。第2期は「カラムーチョ」あるいは「すっぱムーチョ」といった商品のように、海外の食文化を日本に持ち込んできた時期。

その後、しばらく拡大の時期にあったわけですが、「いままた、第3の創業の必要がある」と小池会長に言われて、私なりにそれはやりがいがあるなと。そこで新しいロゴの考案では、わかりやすく言えば羊羹の「虎屋」さんみたいな雰囲気をイメージしました。「虎屋」さんのような和の世界観を、少しでも学びたいと思ったのです。

湖池屋は、ポテトチップス、もっといえばスナックの老舗ですから、これからどういうことがなされなければいけないのかなと考えた時、まず、そのキービジュアルを作りました。六角形の中に「湖」の一文字を入れたわけですが、湖の文字を使ったロゴって湖池屋しかないんです。

それから意識したのは、創業者に学べ、創業の原点に学べということ。どういう気持ちで最初、ポテトチップスを作ったのかといえば、実は天ぷらだったのです。天ぷらをカラッと揚げるように、じゃがいもの素材がジューシーで、かつ旨みを損なわないうちに揚げ切るんだと。そこからポテトチップスが始まったということを聞いて、その継承技術をいまの時代、あるいは未来に向けてどうやったら活かせるかなと、そんな発想をしていきました。

そして、新しいロゴを作り、社章を変え、名刺も変え、紙袋も変え、本社内のエレベーターの床も木製にし、玄関の庭や和風のエントランスについても、東北地方の杉、あるいは京都の竹を使い、「湖」のロゴの入った暖簾では、横綱の回しを締める方に染めていただいた藍色なんです。

── まさに和の老舗の世界観ですね。「PRIDE POTATO」の開発秘話はどうだったのでしょう。

一番やりたかったのは、国産だけのじゃがいもで作るということでした。そこで北海道のじゃがいもの産地の方をお訪ねしたり、あるいは九州の産地の方のところにもお邪魔したりしています。

じゃがいもの作り手である、農家の皆さんと共同作業をする時代に入ったと思っているものですから、そのあたりも経営に取り入れて、お客様とのツーウェイといいますか、対話型の会社になるべきじゃないかなと考えました。

── 「PRIDE POTATO」の特徴は、国産じゃがいも100%使用というアピール点もですが、商品の袋の形状が縦長という、これまでのポテトチップスの袋とは違う、斬新な点も目を引きました。これは、佐藤さんのマーケティングのなせる業かなと。

まったくどこにもない袋を作ろうとしたわけではなくて、何かプロットになるようなものはないかと探しましてね。通常、ポテトチップスの袋でお世話になっているのは「ピロー」っていう枕型の形状なんですが、私は、袋を置いた時に倒れない、自立できるパッケージがいいなと。

そこがまず最初にあって、さらに当初出した「PRIDE POTATO」の3種類の袋は、赤、緑、黄色のカラーをそれぞれ用いて、イメージしやすい信号機に見立てました。そして、袋を裏返していただくと、いまの湖池屋の暖簾の写真を印刷してあります。

──「PRIDE POTATO」というネーミングも、かなり早い段階から決めていたのですか。

一番最初は、「コイケヤ100」にしようかと思っていたんです。国産100%という意味でね。でも、社内のスタッフや外部のクリエイターの方と侃々諤々やって、「『コイケヤ100』もいいけど、それは湖池屋さんのプライドですよね」と。だったら、「PRIDE POTATO」はどうかというのが駄洒落のように出てきて、親しみやすいネーミングだし、「そう、これこれ!」っていう感じで決まりました。

「300円ポテチ」でも勝負

── 「PRIDE POTATO」シリーズは、第2弾として今年9月、「手揚食感 長崎平釜の塩」と、「手揚食感 柚子香るぶどう山椒」を投入しました。第1弾の3種類の商品に比べて、テイストはもちろんですが、文字通り手揚食感という感じで、前作より噛み応えのある商品になっています。そして、さらに10月、シリーズの最高峰というべき、「今金男しゃく 幻の芋とオホーツクの塩」も投入。こちらは、150万袋の数量限定で、価格が298円と、これまでの2倍の値付けでしたが。

フラッグシップというか、年に一度しか獲れない芋なんです。昨年、その事実を知った後、もういてもたってもいられず、すぐに「商品化してみたらどうだ」と社内で言いました。

まず、昨秋に「ポテトチップスのり塩 今金男しゃく」(90㌘が6袋で1980円)という商品名で、オンライン限定販売をしたところ数日で完売しましてね。そこで多少、自信を深めることができたものですから、今秋の全国一斉発売っていうところまで漕ぎつけたのですけど、北海道の農協さんの絶大な共感とご協力をいただいて、ポテトチップス用に、わざわざ芋を仕込んでいただきました。湖池屋の、これからの生き方や仕事のやり方を決定づけてくれるような一品になるんじゃないかと。

我々には競合で大きなライバル会社(=カルビー)がありますが、そことは戦い方を同じようにはしないと。きっちりと差別化された戦略を組み立てなきゃいけませんし、そういう意味では、(佐藤氏が長く在籍した)キリンの時代とはある意味、対極の経営戦略を考えていかないといけないわけです。

── このシリーズはさらに第3弾、第4弾と出していくのですか。

スナック菓子の世界も、これから大人市場がどんどん必要になってきます。人は加齢してくると当然、食べる量はちょっとでいいけど、それなりの美味しさを求めますよね。

私自身も実際、だんだんそうなってきましたので、美味しいイタリアンを見つけたり、美味しいお寿司屋さんを見つけたり、そんなに量は食べないけれどもちょこちょこ行きたくなるという。そういう、割と暮らしに近いところに食ってありますから、喜々として日々、商品開発のネタ探しをしています。

やっぱりプレミアムというか高品質化というか、大人市場に向けて、あるいは週末のプチ贅沢というか、そういうのがこれからのお客様のベネフィットになると思います。そこで、スナック菓子ができること、あるいはそれを飛び越えても需要に貢献していくっていうことが向かっていく方向ではないかと。大人とか健康、あるいは中食の中にスナックが出ていけるポジションを見つけること、などが今後の大きな経営課題になると思います。

(聞き手=本誌編集委員・河野圭祐)

2017年12月号 目次

試し読み
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