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2017年12月号

親族同士の〝争族〟にはさせない 感情に強みを持つコンサル集団

石野 毅 一般社団法人相続・事業承継コンサルティング協会 代表理事

ある日突然やってくる相続、事業承継。準備をしていなければ、親族同士でトラブルに発展することも珍しくない。どのようにすれば揉めることなく円滑に相続が進むのか、資産を遺す側も悩みは尽きない。そんななか、法律や制度だけでなく、感情論や人生設計に踏み込んだ異色のコンサルを手掛けているのが相続・事業承継コンサルティング協会だ。代表理事の石野毅氏に話を聞いた。 いしの・つよし 立命館大学卒業後、アパレル企業の営業を経て、1997年ソニー生命のライフプランナーに転身。2003年最高位のエグゼクティブライフプランナーに昇格。05年独立し、キーストーン、キーストーンFPコンサルタンツを相次いで設立し、代表取締役に就任。16年一般社団法人相続資産コンサルタント協会を設立し、今年9月に相続・事業承継コンサルティング協会に名称変更。代表を務める。

感情的なトラブル

── 最近は「相続」や「事業承継」に対する関心が高くなり、各種メディアでも、こうした話題が多く取り上げられるようになっています。「一般社団法人 相続・事業承継コンサルティング協会」は名称がそのものを指しているわけですが、コンサルティングに対する需要についても高まっているのでしょうか。

非常に高まっていると言えます。多くの場合、相続や事業承継のコンサルティングというのは、士業の先生方、税理士や弁護士、司法書士が入り口になると思われていると思います。もちろん、税務・法務・不動産といった専門的な領域の問題解決を望んでおられる方は多いです。しかし、そのもう一歩手前にある親族間の感情的なトラブル、「相続」がいわゆる「争族」になるようなケースで悩んでいる人もいます。その問題解決の糸口をどこかに頼りたいと思っている方はとても多いです。

「我々の大きな強みは、クライアントの感情に寄り添うこと」と語る石野氏。

── 争族になった、あるいはなりそうな場合というのは、税理士等の士業では対応しづらいと。

親族間の調整や感情の部分をどうクリアしていくかが本質的に大事な部分で、ここがすんなりと運べば士業の先生方がきちんと対応してくれます。ところが、相続や事業承継に悩んでおられる高齢の方に話を聞くと、まず感情論になる場合が多いです。例えば、嫁姑の話から、介護に対する不安、事業の経営的な問題等々、いろいろなことが入り混じって収拾がつかず、漠然と悩んでいる方が実に多い。富裕層の場合は税理士がお抱えでいることが多いのですが、やはり会計の専門家ですので、現在の状況を見て、点の部分ですべてを解決しようとしがちです。やはり時間の経過とともに目の前にあるいろんな問題点をどう解きほぐしていくのか、長い目でどう対策を考えていくのかが重要だと思います。

── その面で相続・事業承継コンサルティング協会は、いわゆる士業のコンサルティングとは取り組み方が異なるというわけですか。

我々は士業の先生方を非難しているわけではありません。税務・法務・不動産等の専門的な知識は必要で、むしろ連携は不可欠だと考えています。立ち位置の違いは、まず我々はフロントエンドでクライアントさんがどのようなことに悩んでいるのか、しっかりと現状把握をする。そのうえで問題点の整理をします。

── 現状把握というのは、具体的にどのようにするのですか。

最初のアプローチで、30分~2時間ほどお時間を取っていただく。我々からどのような対策や制度が使えるという提案をするのではなく、やはり感情の部分を1つずつ吐き出してもらいます。これはコーチングのスキルにも似ているのですが、自分がどういう問題を抱えているのかを話していくことによって、自分の置かれた状況がスッキリと理解できるようになっていきます。

優れたマッサージ師は、短時間で一通り体を撫でていきながら、お客様のツボを押さえるのが上手です。それと同じで、相続に悩みを持っている方は漠然とどこかが凝っていて辛いという気持ちがあるわけです。これを順番にヒアリングしていくことで、心のツボが見えてくる。そこを揉みほぐすことで問題の解決に導くことができます。我々の大きな強みは、クライアントの感情に寄り添うことです。そこまでできれば、今度は専門的な知識が必要になるわけです。

── 争族や感情論で問題を抱えているクライアントに対して、どのように接点を持つのでしょう。

コンサルの入り口としては、コラボ先との連携が大きいです。大手の企業がそのお客様向けにいろいろなセミナーを開いています。相続や事業承継に悩んでおられる方にセミナーを開く場合は、その講師を求めています。我々はこうしたセミナーに講師としてお話をさせていただき、その後の個別相談等で接点を持つことが多いですね。協会として全体で同じコンテンツにしているのですが、セミナー自体を法務税務の知識習得型の講座にするのではなく、争族とか感情の問題をどのようにクリアにしていくか、そこにフォーカスしたセミナーの内容にしています。

実際、セミナーに参加していただけたのは70代以上の方が多く、相続に関しては特に未亡人の方が誰に頼っていいのかわからずに悩んでいるケースが多かったです。我々は相続が発生するまでの期間、数年なのか10年以上なのか、常にそのクライアントと寄り添い、人生の伴走者という形で、親族関係もフォローしていきながら、段階的に問題解決をしていきます。親族間で争族にさせないような形のフォローをしながら、専門的な領域の先生方ともうまく繋いで、コーディネートをしていくということをやっています。

生保系FPの持つ強み

── どういった経緯からこのような協会を立ち上げることになったのですか。

月例の研究会は活発な議論が飛び交う。

もともと私が相続や事業承継のコンサルを自社で手掛けていたこともあって、5年ほど前に某大手百貨店さんからのご依頼で約1年半、セミナーの講師を務めたことがあります。そのセミナーの対象が外商のお客様でした。少人数制だったこともあって、半年待ちのような状況で、いかに相続について悩んでいる人が多いのかを感じました。それで年間100件超のコンサルを資産家向けにやらせていただいたところ、相続に悩むポイントが見えてくるようになりました。しかし、せっかく問題解決のノウハウがわかってきたのにもかかわらず、相続や事業承継に困っている方は全国にいます。私だけではとても伝えられませんから、全国にこのノウハウを広げようと3年半前に「相続資産コンサルタント養成講座」を開き、ヒアリングからコンサルティング、問題解決とその解決手法等々、流れを体系立ててお伝えする講座をつくったのです。

この講座の卒業生が、せっかく学んだのにこれで終わるのはもったいないと2015年に「相続資産コンサルティング研究会」を立ち上げまして、これは「事業承継勉強会」も加えて現在も続いています。この研究会が数百人レベルに達したところで、昨年「一般社団法人 相続資産コンサルタント協会」を立ち上げました。また、同じく昨年「事業承継戦略ナビゲーター養成講座」も開講し、この卒業生も100名近くに達しましたので、今年9月に協会の名称を「一般社団法人相続・事業承継コンサルティング協会」としています。

── 研究会ではどのようなことを学んでいるのですか。

この研究会が我々にとって非常に大きな資源、宝になっているのですが、ここで卒業生たちの事例やコラボ先の情報等を共有しています。ここには相続のプロである士業の先生方もお呼びして情報をいただいたり共有したりしています。我々がクライアントに対してヒアリングをし、問題点の整理をしたところで士業のネットワークや不動産業界の方々とも連携しますから、この研究会のなかで提携関係を深めていくのは大事なことだと思っています。

── 講座の受講生には、どのような職種の方が多いのでしょう。

最初は生保系のファイナンシャル・プランナー(FP)が多かったですね。現在は生保FPと不動産FP、1割ほど士業の先生も受講されています。我々の強みとして、このFPという存在が大きいです。ファイナンシャル・プランニング=ライフ・プランニングをともに考えていく。不動産にしても資産として考えると金額が絡んできますし、親子関係、嫁姑の関係など、ただ財産を分けるだけではなく、人生設計にかかわるものとして考えなくてはいけません。親は子供たちが争族になることを望んでいないのですから。

── 相続まで含めて窓口になった場合、その間のビジネスフィーは、たとえば士業の人たちとシェアをするのですか。

いまのところ、協会として営利目的で運営しているわけではありませんので、シェアをすることなくご紹介をしています。お客様から個別相談の依頼を受けてコンサルティングがスタートすると、お客様のほうから相談料についてのお話をいただきますので、そこではコンサルティングフィーをいただくことはあります。しかしながら、生保FPの場合、1社専属の人は副業ができない等の制限があることが多く、紹介によるフィーは取れません。いまの段階ではフィーについて協会は立ち入らない形ですが、将来的に何らかのルールを設けていかなくてはいけないでしょうね。

── 生保系FPが多いのは理由があるのですか。

生命保険を扱っている場合、家庭内の話を聞かないと設計できないというスタンスで仕事をしている方が多いです。したがって、感情論による家庭内の揉め事の話を聞くことに慣れている人が多い。顧問税理士に話せないようなことでも生保FPの人には話しているケースもあります。ただ、相続や事業承継に対して、士業の方の邪魔をしてはいけないと、意識的に深く立ち入らない場合もあるのです。保険会社さんの肩書のままでは相談を受けづらい。しかし、相続・事業承継コンサルティング協会会員という肩書、そのブランディングを彼らに渡すことで、相続・事業承継に悩んでいる方からの声掛けや個別相談の受注率が飛躍的に上がります。そのうえで、士業さんとケンカするのではなく、協力してお客様のライフプランをコーディネートしていくことができます。生保系FPの人はコミュニケーションスキルが高い方も多いですから、感情論的な相談等には非常に強みを持っていると言えます。

協会としての役割

── 協会の役割としては会員の方のブランディングのほか、どういったものがありますか。

これまでは、協会の設立が間もないこともあって、コラボ先の企業に対して、講座の卒業生がそれぞれアプローチをしていたような状況でした。この9月から協会としてのブランディングに取り組んでいますので、協会がコラボ先から依頼を受けることが多くなると予想しています。協会が窓口になることで、情報発信、あるいは士業さんとのネットワーク、コラボ先との連携が円滑にできるようにしていくつもりです。実際、事業承継などは、OA機器等の大手企業が中小企業経営者向けにセミナーをやりたいというニードは高まっていますし、コラボ先企業の営業面でもお役に立てるかなと思います。

協会のビジョンはあくまで社会貢献にあります。人生の集大成の段階で、後世に大切な資産、事業を引き継ぐ水先案内人をやりたい。そのような立ち位置で社会貢献をするということです。

── 協会を設立して1年が経ち、9月15日には「相続・事業承継コンサルティングアワード2017」を開かれました。どのような基準で選ばれたのですか。

この1年間で著しく成果を出したメンバーや、協会に対する貢献度が高いメンバーを表彰しています。研究会で成功事例を惜しげもなく提供してくれたり、新たなセミナーの情報を紹介してくれたりした方たちです。大賞をはじめ相続と事業承継の優秀コンサルタント賞、優秀講師賞、審査員特別賞など、今年は8名が表彰されました。

アワードと前後して、九州に勉強会が立ち上がりました。これが支部になっていくと思います。すでに関東・関西・東海・北陸・甲信越に勉強会はありますので、近々に東北・北海道にも立ち上げ、8つのエリアごとに支部を作っていく予定です。

相続資産コンサルタント養成講座の卒業生が約1000人、事業承継戦略ナビゲーター養成講座の卒業生が100人規模となり、こちらも大きな規模になってきました。ノウハウを全国に広げたいという思いからスタートしたものが、コンサルタントを全国に輩出できる段階まで来ています。協会として彼らを支援しつつ、多くの相続・事業承継に悩む方の問題解決に取り組みたいと思っています。

2017年12月号 目次

試し読み
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