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2018年01月号

キャッシュレス先進国スウェーデンを 牽引するスマホアプリ「Swish」

沖田貴史 SBI大学院大学 特任教授

おきた・たかし 1977年石川県生まれ。98年一橋大学在学中に、サイバーキャッシュ株式会社(現ベリトランス株式会社)の立ち上げに参加。2005年から10年間、代表取締役を務め、香港上場やアジア展開を加速。2016年5月より、SBI Ripple Asia株式会社 代表取締役。主な公職に、金融審議会専門委員など。

11月はじめ、既に冬が始まりつつある北欧スウェーデンの首都ストックホルムを訪れた。北欧は、知る人ぞ知るキャッシュレス先進地域であり、その中でもスウェーデンは、GDPに占める現金発行比率が2%を下回る世界で最もキャッシュレスが進んだ国である。

早くからクレジットカードの普及が進み、ほぼ全ての場所で、カード決済が可能であり、私も滞在中、現金を使う機会は一切なかった。

現金を使う必要がないどころか、券売機や自動販売機は、現金を受け付けないものが多く、店舗においても「現金での支払いを断る」商店も増加しており、現金を使いたくても使う場がないという状況ですらある。

商店主にとってのキャッシュレスの利点としては、いわゆるハンドリングコストの削減である。つまり、釣り銭の用意や売上金の管理・銀行持ち込みの手間を削減する等である。また、防犯面での利点も大きい。ハンドリングコストは、現金社会の日本では、無視されやすいが、キャッシュレスが究極までに進むと、意識が高まりやすい。

キャッシュレスが進むのは、商店だけではない。スウェーデン最大の銀行であるスカンジナビスカ・エンスキルダ銀行(以下、SEB)は、ストックホルム市内に、十数店舗の支店を持っているが、そのうちで現金を取り扱っているのは、2店舗のみだという。

スウェーデンでは、2000年代に、現金輸送車を狙った事件が頻発したそうだが、現金がなければ、銀行強盗も起こらないし、現金輸送車の頻度も減らせる。

また、各支店では、現金を扱う手間を削減した分のリソースを、顧客サービスに充てられる。今回訪問したSEBの新型店舗では、PCやタブレットを最大限活用し、ソファに腰掛けながら、資産運用のアドバイスなどの業務に集中する姿が見られた。

このようなキャッシュレス社会を一層牽引している存在が、12年に誕生した、「Swish(スウィッシュ)」という名のスマートフォンアプリである。

Swishは、6つの大手銀行により設立され、現在は10銀行が参加するサービスである。口座番号でなく、電話番号やQRコードにより、決済が行える簡便さが受け、スウェーデンの60%の国民が、同アプリを利用している。

主な利用シーンは、個人間の送金である。割り勘や、お金の貸し借りの場では、現金でなく、Swishを使うのが、20代〜50代では一般的だという。このサービスによりB2Cだけでなく、C2Cの決済においても、現金を用いることがなくなり、12年以降、現金流通量は急速に減少している。

スマートフォンを使った決済サービスでは、AlipayやVenmoなど、テクノロジー企業が牽引するケースが多かったが、Swishの成功の後、米国のZelle、シンガポールのPaynow等のように、銀行が主体で取り組むプロジェクトが続々と立ち上がっている。

日本でも、内外為替一元化コンソーシアムでは、これらに相当するアプリを提供する予定だ。北欧・米国はもとより、中・韓にも大きく後れをとったキャッシュレス後進国の汚名返上の契機となることを期待している。

2018年01月号 目次

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