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2018年05月号

問われる仮想通貨取引所の 倫理観と自浄作用

沖田貴史 SBI大学院大学 特任教授

おきた・たかし 1977年石川県生まれ。98年一橋大学在学中に、サイバーキャッシュ株式会社(現ベリトランス株式会社)の立ち上げに参加。2005年から10年間、代表取締役を務め、香港上場やアジア展開を加速。2016年5月より、SBI Ripple Asia株式会社 代表取締役。主な公職に、金融審議会専門委員など。

1月26日に発生したコインチェックの事件から、1ヵ月半が経ち、ようやく利用者への補償が開始されることになった。

同社では、2月13日から、日本円の出金を開始しており、初日に400億円を超える金額の出金を完了したと発表しているが、あくまでも、利用者がコインチェックに預託していた日本円を出金しただけであり、預けている仮想通貨については、出金どころか売買取引を行うことも1月26日以降、1ヵ月半以上停止されたままだった。

流出したNEMを保有していた顧客約26万人(当時のレートで、580億円相当)については、NEMではなく日本円での返金を実施すると1月28日に発表しているが、発表から1ヵ月を過ぎても、それは実施されてはいなかった。しかしながら、3月8日に実施された記者会見において翌週に返金を開始し、一部のサービスも再開するとの発表がなされた。

 一方で、この間にも、仮想通貨取引所を巡る事件は頻発している。例を挙げると、Zaifは、大規模な広告戦略を開始した直後の2月16日に、ビットコインなどの2つの仮想通貨の売買価格を、誤って0円で設定していた上に、ビットコインの発行上限である2100万BTCを大きく超える21億BTC(2000兆円に相当)を販売してしまっていた。

同社は、この取引を無効とすると発表している。金額の異常値からも致し方ないとは思われるが、同様の問題は、昨年にコインチェックでも発生していた。また、コインチェック社の流出事件以前ではあるが、Zaifでは、1月に不正出金事件も発生している。

このような状況を受け、金融庁は迅速に行動を開始している。コインチェック社については、流出事件当日(1月26日)に、原因究明等に関する報告徴求命令を発出し、事件の3日後には、業務改善命令を出し、また2月2日からは立入検査を実施している。

また、コインチェック社だけでなく、みなし業者を含む仮想通貨取扱事業者31社に対しても、システムリスク管理態勢に関する報告徴求命令を発出し、一部事業者には、立入検査を行った上で、3月8日には、Zaifを運営するテックビューロとGMOコインの2社の登録事業者と5社のみなし事業者に対して、業務改善命令や業務停止命令などの行政処分を断行した。

金融庁の動きが早いことは望ましい一方で、諸問題の多くは、あまりにも幼稚なものや、技術面で詳細にわたるものが多く、本来は業界団体が自主規制で対応するべきものが多い。

これまで一本化がなされていなかった業界団体については、ようやく新団体を設立し、自主規制団体としての認証を取得する方向となったが、自浄作用を働かせるには、程遠い発言も、未だに発信されているのが実情だ。

金融育成庁に舵を切った金融庁が、金融監督庁に戻るのは容易い。ただし、規制強化によって、一番被害を受けるのは、新たな技術やサービスの恩恵を受けられたはずの利用者である。

関連する事業者の多くは、新技術による社会発展などの高い志を掲げている。今こそ、言葉だけでなく、行動で示していくべき時である。

2018年05月号 目次

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