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2018年06月号

証券業界との連動により期待される 仮想通貨事業者の健全化

沖田貴史 SBI大学院大学 特任教授

おきた・たかし 1977年石川県生まれ。98年一橋大学在学中に、サイバーキャッシュ株式会社(現ベリトランス株式会社)の立ち上げに参加。2005年から10年間、代表取締役を務め、香港上場やアジア展開を加速。2016年5月より、SBI Ripple Asia株式会社 代表取締役。主な公職に、金融審議会専門委員など。

4月6日、マネックスグループがコインチェックの買収を発表した。1月26日の流出事件発生以降、大手企業による買収可能性が水面下では取り沙汰されていたが、その真相がマネックス証券を傘下に持つマネックスグループによる完全子会社化であるということが明らかになった。

物件の価値を正しく目利きできる強みを持つ。

 大きな賭けとも言える同社の意思決定に、株式市場は株高で応えた。正式発表に先行して、同社の買収可能性について日経新聞が報じた4月3日午後には、ストップ高まで株価が上昇した。 4日・5日は一進一退を繰り返したが、6日も再びストップ高となり、報道前(2日の終値)の324円に対して、4日間で480円と1.5倍近くまで上昇した。また、4日の売買高は1億4000万株を超え、東証上場銘柄の首位となった。

 株式市場の高い期待と注目に対して、前途は多難だ。

 まず、あげられるのは、コインチェックに高収益をもたらしていた高スプレッドが、今後も続く可能性は決して高くはないことである。これまで、ベンチャーが主体であった仮想通貨交換業に、大手企業の参入表明が相次いでおり、認可がされれば、価格競争が進むのは間違いない。また、累計で1000億円を超える営業利益を稼いだとも噂される同社の収益力を支えていたのは、マイナー通貨に依るものであるが、セキュリティ体制確保の観点に加え、とりわけ匿名性の高い通貨については、仮想通貨交換業の正式登録を考えると、取り扱いを見直さざるを得ない。

 その業登録がなされるかについても、明確にはなっていない。4月6日の記者会見で、松本大CEOは、2ヵ月程度での登録がなされるのではと自信を見せていたが、同日にはみなし登録業社16社中2社に業務停止、1社に業務改善命令が出されており、6社は自主的に申請を取り下げている。コインチェックは、2度目の業務改善命令の際に、指摘された経営体制の見直しを図った一方で、それが顧客保護の観点で実効性を持つようにするのは、これからである。

 また、最大のリスクは、訴訟リスクである。流出事件が明らかになった1月26日以降、多くの仮想通貨の売買が、長期間停止されたが、その間価格の下落が続き、利用者は損失をただ見るしかなかった。NEMについても、現金での補償は完了した一方で、事件発生時の時価580億円相当に対して、補償額は約460億円にとどまった。算出方法や補償方法について、利用者の不満は小さくない。

これらのリスクに対して、マネックスは、アーンアウト条項を設定することで、買収時の支払額を36億円にとどめるとともに、訴訟費用等を追加支払額から控除することで、リスクの軽減を図っている様子である。

今回の買収の有無にかかわらず、健全化に向けた取り組みは加速し、その過程で仮想通貨取引所との関連が強い証券・FX業界との連動は増えるだろう。いま業界が行うべきは、各種課題の遠因となってきた業界団体の機能不全を解消し、自浄作用を発揮することだ。その時に求められるのは、新技術が社会発展を支えるという高い志であることは間違いない。

2018年06月号 目次

試し読み
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