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2018年07月号

証券コンソーシアムで進むか、 「貯蓄から資産形成へ」

沖田貴史 SBI大学院大学 特任教授

おきた・たかし 1977年石川県生まれ。98年一橋大学在学中に、サイバーキャッシュ株式会社(現ベリトランス株式会社)の立ち上げに参加。2005年から10年間、代表取締役を務め、香港上場やアジア展開を加速。2016年5月より、SBI Ripple Asia株式会社 代表取締役。主な公職に、金融審議会専門委員など。

4月19日、証券会社を中心とした35社の首脳が集合し、「証券コンソーシアム」が発足した。発足の背景は、現在金融業界に押し寄せている分散台帳技術(DLT)等に代表される技術革新、つまりフィンテックの波である。

証券業界としては、これらの技術革新を業界一丸となって、積極的に取り込むことで、これまでトレードオフの関係にあった「ユーザーの利便性向上」と「証券業務の効率化」とを両立し、「貯蓄から資産形成へ」を、一層進めていく方向だ。

その目的達成のためには、DLTに限らず、人工知能(AI)や、生体認証、RPA(ロボット技術による業務効率化)など幅広い技術に関して、業界横断的な取り組みが必要だ。

証券業界では、これまでもDLTを活用した実証実験が行われていたが、今後は早期の実用化が期待される。その一例は、本人確認(KYC)の一元化とシングルサインオンである。

現在、証券リテール分野では、ネット取引が主流であり、全体の8割以上を占めるほどである。ネット取引におけるログインに際しては、その他のネットサービスと同様に、ID・パスワードを入力する方式が一般的だ。

株価の値動きが活発になると、普段はそれほど取引をしないユーザーも取引を再開するが、その際にIDとパスワードを正確に記憶している人は、決して多くない。パスワードを失念した場合は、コールセンターに問い合わせることになるが、セキュリティを考慮すると、パスワードを電話で伝える訳にもいかず、郵送せざるを得ない。これは、今すぐ取引を行いたい利用者にとって不満となるだけでなく、証券各社にとっても負担となっている。

とはいえ、覚えやすさを重視し、安易なパスワードを許せば、セキュリティは下がる。特に、他のサービスと同じID・パスワードを使うと、そのサービスでの情報漏洩が証券取引にまで影響を及ぼし、多大な影響を受ける。

証券コンソーシアムでは、ログイン時の本人確認を生体認証で実現することを検討している。この機能を業界全体で取り組むと、利用者は一度登録すれば、どの証券会社の口座でも生体認証でログインが可能となる。

証券各社も、共同で取り組むことで、生体認証にかかる開発コストが低減できるだけでなく、外部からの攻撃や災害対策などの費用を削減することが可能となる。

KYCの観点では、口座開設や住所変更の際にも、1つの証券会社で本人確認が完了すれば、あちこちに免許証コピーを送るという手間もなくなる。

韓国においては、既にアンチ・マネーロンダリング(AML)対策での本人確認基盤にブロックチェーンが活用されている。今後、国内各社での連携はもちろんだが、海外の同様の取り組みとも連携を図ることで、最先端機能の活用にいっそう弾みがつくと考えられる。

また、証券コンソーシアムは、証券会社だけでなく、テクノロジー企業等のエコシステムを形成する様々な企業にも、門戸を広げている。オープンイノベーションの好例になることが期待される。

2018年07月号 目次

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