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2018年09月号

包装フィルムの独自技術で 「世界」と「新市場」を狙う

大江正孝 サンプラスチック社長

おおえ・まさたか 1982年10月31日生まれ。千葉工業大学プロジェクトマネジメント学科卒業後、プラスチックフィルムメーカーに入社。入社3年で総務経理担当取締役就任。2014年、事業承継のためサンプラスチック株式会社を創業。日本国内トップシェアのPVCシュリンクフィルムで新市場を開拓し、世界一のフィルムメーカーを目指す。

ペットボトルから半導体まで

── サンプラスチックの事業について教えてください。

「シュリンクフィルム」の製造を主力としています。あまり聞きなれない言葉かもしれませんが、実は身近な製品です。商品を覆ったフィルムに熱を加えて収縮(=シュリンク)させ、商品がぴったりと包まれるという技術で、ペットボトルのラベルや化粧品の箱などにかけられているフィルム包装としておなじみです。そのほか当社では、帯電防止フィルムと導電フィルム(静電気を逃がす機能を持ち、精密機器や電子部品を静電気障害から保護するフィルム)などを製造しています。

── たしかに多くの商品がフィルムでくるまれています。薬事法や食品衛生法はフィルム包装を義務付けているのですか。

義務はないのですが、特に日本では広く普及しています。シュリンクフィルムは、工業用途を中心に、絶縁体として、または半導体の被膜として活用されてきました。しかし、ある事件を契機として、生活空間に拡大していきました。

それが「グリコ・森永事件」(1984〜85年)です。一連の事件の中で、毒物が混入した食品が全国のスーパーにばらまかれ、消費者にとっては、一時は店舗で食品を購入することが恐ろしくなるほどのショックを与えました。事件を受けて食品の安全性を高めるため、容器に未開封を示すシールを貼る、開封されたことが一目でわかる構造の容器を採用するなどの対策がとられます。シュリンクフィルムを含むフィルム包装もそのひとつだったというわけです。現在では、商品の保護だけでなく、マンガ本、電池、雑貨などのあらゆるパッケージに使われています。

── 包装材は品質とコストのバランスも難しそうです。御社の商品の強みは。

シュリンクフィルムには多様な素材が使用されます。そのなかで当社では「PVC」(ポリ塩化ビニル)に絞って扱っています。PVCは生産コストが安く、購入ロットも少なくて済む。ほかの素材ではフィルムを糊で接着する手間やコストが発生しますが、PVCは熱でよく縮むため加工も簡単で、工場など大掛かりな設備を使えない個人でもフィルムをかけることができます。使い勝手のよい優秀な素材です。

PVCは、いわゆる「ダイオキシン問題(90年代~)が社会問題化したことが一因となり、他素材への代替が進みました。現在は高温焼却によりダイオキシンを発生させない処理の仕組みができていますが、シュリンクフィルム市場全体におけるPVCの存在感は大きいとは言えません。市場規模は約2000億円、そのうちPVCは4億円ほど。当社はPVCで約60%のシェアを持つトップ企業ですが、PVCを扱う企業はほかに4社しかない。業界全体で市場を拡大していく努力が必要です。

── なぜ、PVCのなかでトップシェアをとれたのでしょうか。

開発力ではないでしょうか。PVCに限らずですが、プラスチックへの規制は年々強まっており、使用できない添加剤が毎年増え続けている状況です。たとえば、最近ではフィルムを軟化させる可塑剤の「フタル酸」が、環境ホルモンとの関連性を疑われ「ROHS」(ヨーロッパの輸入規制の一種。日本企業の自社基準値にも影響を与える)の対象になりました。そうした規制の更新のなかで、コストや加工性を損なわずにフィルムを作り続けるには、技術力とアイデアが必要です。

また、私はPVCという素材に愛着があるのです(笑)。サンプラスチックは2014年創業ですが、事業承継によるものでした。私は前身となる会社に新卒で入社してから、設備も職人もPVC一筋といえる環境でビジネスをしてきました。いまもこの素材にこだわりながら事業に打ち込んでいるところなんです。

新機軸で業界再起をかける

── 今後のサンプラスチックの展望について、また、シュリンクフィルム業界の将来をどう見ていますか。

「世界展開」「新分野開拓」を狙います。

先日、ベトナム、ミャンマーなどのアジア地域を視察しました。シュリンクフィルムは世界中にありますが、日本のフィルムのクオリティは格別です。袋型で包む構造や品質追究の姿勢は日本ならでは。ですが、それだけで世界で勝てるものではないでしょう。海外には使い捨ての包装にコストをかけ品質を求める価値観はない。むしろ欧米ではエコの意識からも、プラスチック包装は嫌われる傾向です。さらに中国には安価で大量に製造できる圧倒的な体力がある。我々は新しい付加価値を生み出すことで対抗する以外ありません。

ではどうするか。シュリンクフィルムは前述のようにフィルムを熱で縮ませるという特殊かつシンプルな技術。さらに添加剤の配合でさまざまな機能をもたせることもできますから、包装以外の新しい分野に活用を広げられると考えています。

たとえば、異素材やプリントを貼り付ける利用方法。ゴム手袋やレインコートなどに鮮やかな模様を印刷したPVCを接着させれば、デザインに貢献します。抗菌素材を混合すればコーティング効果を高めることもできる。蛍光塗料や蓄光剤を混合した暗闇で光るフィルムは利用価値があるのではないか。導電性をもたせられれば、ウェアラブル端末に活用できるかもしれない。まだまだ可能性はあるはずです。

目標はPVCの市場を現在の倍にすること。競合他社とも力を合わせ、業界を再起したい。トップシェアを持つ当社が、その流れをつくっていきます。

2018年09月号 目次

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