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2018年12月号

増える会員企業 18万社の悩みと対峙

新谷 哲 ウィズビズ社長

しんたに・さとる 1971年東京生まれ。大学卒業後、ベンチャー・リンク入社。仙台支店長、東日本事業部長、執行役員を歴任。その後、常務執行役に就任し、経営コンサルティング部門や営業部門、サービス提供部門を統括。2010年に独立し、WizBizを設立。18万社の会員企業を持つ経営者向けネットメディア「WizBiz」を運営している。

2年間の成果

―― 2012年にスタートした弊誌とWizBizのページも、最終回となります。前回、新谷社長の登場は16年でした。70万人の会員企業・メディアで扱うサイト数を100まで増やすことを目標に掲げていましたね。

当社の創業は10年。企業の悩みを解決するビジネス・マッチングサイトです。

前回インタビュー時の会員数は15万人でしたが、現在は18万人を超えたところ。

サイトの数ですが、絶対数が増えるだけでなく、活用するメディアが拡大しています。「YouTube」「ポッドキャスト」「LINE@」「Facebook」などを含めるとコンテンツはすでに200以上です。

当社の収益の柱は広告です。宣伝もFAXやテレマーケティングといった従来の手法と、「Twitter」や「Instagram」などの新しい広告を使い分けています。

―― 会員は中小・零細企業が中心です。全会員の約8割を占めている。

当社も含め、日本全体の企業のうち8割は従業員20人未満の企業ですから、平均値に近いということです。WizBizの大きな使命は「世界の経営者のことを一番わかってあげられる存在」になること。

当社では社員に副業を奨励していますが、これは社員に社長の苦労を思い知って、経営者に共感できるようになってもらいたいからでもあります。

―― 中小企業の悩みと言えば、人材不足。採用の難しさが思い浮かびます。

現在の大企業の有効求人倍率は0・69倍です。一方で、中小のIT企業では6倍以上、建設業では9倍を超えている。

採用とは、自分の会社を面白がってくれて、入社後に活躍できる人材を集めないといけないわけです。しかし、雇う側の会社も、就職する側の人間も、たとえば6大学を出て安定した大企業で働くような社員像を求めてはいないでしょうか?

大企業では相談を受けたときに指示を出して、それ以外は座っているような部長や役員がたくさんいます。その下に頭が良くて作業は早いけれど決断はしないサラリーマンがいるという組織です。しかし、中小企業では自分で考えて動く人間しか働けません。社長自ら営業し、契約書を作成し、仕事を決めていかねばならないのです。大企業と同質の人材を欲するわけがない。

まず、自社で活躍できる人材は誰なのか、どこにいるのかをマーケティングする必要があるのです。そこを見定めて面接の質問なども決めていくべきですが、そうした採用戦略をとっている会社は極めて少ない。それほど自分の会社の本質を理解することは難しいということです。

―― WizBizの採用事情はいかがですか。

当社は社員数20名弱です。慶応大学卒業の高学歴者から、ホスト経験者まで様々な経歴の社員が働いていますが、安定を求めて就職した人間はいません。むしろ社会からあぶれてしまった人間こそ採用したいですね。

当社がお付き合いする経営者は、規範や標準におさまらない人がほとんどですから、順風満帆に生きてこれなかった人間のほうが向いています。コミュニケーションや日本語力は入社後に教えればいい。それも社長の仕事です。

創業者の役割

―― 前回のインタビューでは、「社長にはなりたくなかった」と話していましたね。

今でも同じ気持ちですよ。創業時から今まで、私が社長をやるべきだから続けているだけです。やる気の有無で社長をしていたら、会社が潰れてしまうでしょ(笑)。ですから、経営者にとって怖いのは、その地位に驕りを持つことかも知れませんね。

いずれは、プロ経営者や、社内から育てた役員なりに後を任せたい。自分の子供に継がせるつもりは全くありません。

―― 経営者の資質とはどのように培われると考えますか。

ひとつの要素としては、強い組織風土・企業文化が、それを体現する経営者を育てるということです。歴史ある企業には必ず「家訓」があります。企業理念・綱領・クレドともいいますが、家訓を持つ企業は、何度経営者が変わり、買収されようと継続していく。創業者の重要な役割のひとつは「家訓」をつくることだと言えます。

次の通過点に向けて

―― 今後の展望はどうですか。

前回のインタビューでIPOを視野に入れていると話しましたが、準備が進んでいます。またリーマンショックのようなことが起こらなければ、早ければ来年にも上場することになるでしょう。上場は資金を集め、有効な宣伝にもなる。会員数を大幅に獲得するためにも重要な通過点です。

いまは私がひとりでがむしゃらに動かなくても組織全体で収益があがるモデルができあがり、自然体でも上場できそうな段階まで来ました。

しかし、気を抜くとすぐに時代が変わり、取り残されてしまうのがITビジネスです。まだ我々のサービスは事実上のオンリーワンに近いナンバーワンですが、やがてライバルも出てくるはずです。

だから理想は持ちません。会社経営は、常に上を目指さざるを得ない。設定された理想に到達して満足した瞬間、崖から突き落とされるような世界でしょう?

目下のビジョンは会員数70万社。「世界の経営者のことを一番わかってあげられる存在」になるには、まだ遠いですよ。上場はスタートラインですらないのです。

2018年12月号 目次

試し読み
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