BOSS ONLINE

2019年01月号

オープンAPIで進むか、 銀行のオープンイノベーション

沖田貴史 SBI大学院大学 特任教授

おきた・たかし 1977年石川県生まれ。98年一橋大学在学中に、サイバーキャッシュ株式会社(現ベリトランス株式会社)の立ち上げに参加。2005年から10年間、代表取締役を務め、香港上場やアジア展開を加速。2016年5月より、SBI Ripple Asia株式会社 代表取締役。主な公職に、金融審議会専門委員など。

金融のイノベーションを大きく加速させる可能性を秘めた制度が、9月末から本格的に開始された。「電子決済等代行業」登録である。

「電子決済等代行業」の実現するサービスとして、金融庁のパンフレットでは「複数の振込先への銀行振込の依頼をワンクリックで行うことができるサービス」や「預金口座の残高や利用履歴等の情報を銀行から取得・集計し、自動的に家計簿を作成するサービス」などを例示している。

つまり、銀行とフィンテック企業などが連携することで、銀行単独では実現し得ない利便性の高いサービスを利用者に提供するために新設された制度である。

この際に重要となるのが、銀行の「オープンAPI」である。オープンAPIは、外部からのデータ連携を安全に図ることを可能にする仕組みであり、Eコマース業界などでは、かねてより公開が進んでいる。

銀行におけるオープンAPIにおいては、預金残高や出入金情報を参照する機能「参照系API」や、実際の振込や引き落としを実行する機能「更新API」が提供されることが多い。

2017年5月に成立した改正銀行法では、「電子決済等代行業」に登録を義務付ける一方で、銀行業界にも、オープンAPIの利活用を推進している。政府が設定した数値目標としては、2020年6月までに「80行以上」だったが、既に130行以上が対応を表明している。

それでは、銀行APIの利活用はバラ色かというと、少し事情が異なっている。そもそもで、日本のオープンAPIに関する政策は、欧州で2016年に施行された「PSD2」と呼ばれる規制を参考としているが、PSD2においては、金融機関はAPIの公開が義務付けられている一方で、フィンテック企業側も、更新系APIを利用する際には免許が必要となり、銀行も安心してAPIを公開することが可能となっている。

日本では、どの企業にAPIを公開するかは、それぞれの銀行が個別で審査をするため、APIを公開しても、どの程度活用が進むかは分からない状況である。

とはいえ、世界では、銀行APIを活用することで、自身は銀行ライセンスを持たずに、新たな付加価値を提供する企業が増えてきており、利用者からの評判も良い。その結果、自らは直接預金者向けサービスを提供せず、そのような新たなサービス事業者に対して、API提供のみを行う銀行すら現れている。

また、外部向けに公開したAPIを、銀行自らが活用することで、これまで通り銀行自身が顧客に提供するサービスであってもシステム構築に掛かる期間を短縮することも可能である。

これまでは、銀行サービスは、銀行のみが開発・提供する一方で、実質的なシステム開発は一部ベンダーが寡占しており、その結果、サービスの柔軟性を高めることは容易ではなかった。

これからは、製造業等では常識になリつつあるオープンイノベーションが、銀行業界でも加速し、結果として利便性の高いサービスが次々と出現するだろう。それは利用者・銀行業界双方にとって期待が生まれる。

2019年01月号 目次

試し読み
“VR動画配信” 最大手の次の策とは
IR CLIP グレイステクノロジー
オープンAPIで進むか、 銀行のオープンイノベーション
相次ぐ企業の参入 発展期を迎えたeスポーツ
「超熟」20年目の新商品は なぜ「フォカッチャ」だったのか
[PR] “たばこを吸う人も吸わない人も” たばこライフスタイルブランドjouzの提案