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2019年01月号

相次ぐ企業の参入 発展期を迎えたeスポーツ

木村唯人 Cygames常務

近年、急速に目にする機会が増えてきた「eスポーツ」。ネット配信をはじめ、TOKYO MXやBS、CSなどテレビでもeスポーツ関連の番組が増え、着実に認知度が高まってきた。

 もともとは「ゲームのスポンサーイベント」としての枠組みから脱却できず、それが日本では競技として発展が遅れた要因にもなっていた。それがインドネシアで開催された2018年アジア競技大会では大会史上初めて公開競技として採用され、22年に中国開催のアジア競技大会では正式メダル種目として採用されることが決まった。日本もこの流れに遅れまいと、従来3つに分かれていたeスポーツ団体が統合され、日本eスポーツ連合が発足、風向きは大きく変わった。

 そんななか、18年6月、同年12月に開催される「シャドウバース」世界大会の優勝賞金が1億円超になることが発表された。シャドウバースはCygamesが配信するスマホカードバトルゲーム。現在まで2000万ダウンロードを記録する世界的に人気のあるゲームだ。

 世界大会では世界各地域から予選会を勝ち抜いた24名が参加し、その腕を競い合う。開幕を直前に控え、Cygames常務の木村唯人氏に、eスポーツの現状について話を聞いた。

eスポーツについて語る木村氏。

eスポーツ元年が来た

―― 日本は「世界のeスポーツの潮流から遅れている」と言われてきましたが、最近はテレビでもBS、CSなどでの放送も増え、盛り上がってきているような印象を受けます。日本のeスポーツの現状はどのようなものでしょうか。

 ここ数年、毎年eスポーツ元年と言われてきましたが、2018年は本当にeスポーツ元年だったのかなと感じています。統一団体として一般社団法人日本eスポーツ連合(JeSU)が立ち上がったり、海外でも国際大会でeスポーツがスポーツ競技の1つとして取り上げられたりするなかで、国内メディアがeスポーツに乗り遅れると時代に取り残されるという雰囲気になってきました。

 そのようななか、18年はeスポーツと呼ばれるコンテンツが増え、大小様々な大会が開かれ、インターネット配信もすごく増えてきます。1つ大きなイベントがあったというより、小規模でも幅広くイベントが増えたという印象です。我々の「シャドウバース」でもプロリーグが始まりましたが、他のゲームでもプロリーグが始まってきていますね。

―― 日本も世界に追いついてきていると。

 世界に追いつく、という表現は少し違うのかなと思います。日本は日本なりのeスポーツの形を模索している段階です。もちろん海外と同じような規模で盛り上がってほしいとは思っていますが現状は少し異なる傾向になっています。いまeスポーツに関わっている人がすごく増えていて、海外にあるeスポーツを日本に持ってきたいという人もいれば、日本独自の形で広めたいという人もいます。eスポーツをどうしたいのかはそれぞれ思惑が異なっていますので、必ずしも同じ目線にはなっていないでしょうね。

―― eスポーツに関わる企業は、ゲーム会社が中心ですか。

 いまはゲーム会社が主導している形ですね。それは海外も変わらないと思います。

―― とはいえ異業種の企業でもスポンサーについたり、リアルの実業団スポーツのようにチームを持つところも増えていますね。

 シャドウバースのプロリーグでは、横浜・F・マリノスや、サッポロビール、おやつカンパニーなど企業がチームを持つ場合もありますし、あくまで広告スポンサーのような形で関わってくださる企業もあります。形はどうあれ、基本的には企業としての目的は同じで、若年層へのアピールを一番求めているのではないでしょうか。サッカー・Jリーグの明治安田生命さんのように、Jリーグ全体のスポンサーをしていても球団を持たない企業もあれば、それぞれのチームを支援する企業もある。eスポーツも同じだと思います。

―― 他の国のeスポーツでも同じような動きですか。

 企業が独自にチームを持つというのはあまりないですね。既存のチームにスポンサードする形です。ただ、海外のプロサッカーチームがプロeスポーツチームを持ち始めていて、日本も同じ動きはありますから似た部分もあります。しかしながら、韓国、中国、欧州、それぞれ状況が異なっているので、日本と単純比較するのは難しいです。やはり日本のeスポーツとして発展させることを考えなくてはいけません。

―― eスポーツをオリンピック種目にという話もありましたが、こうした取り組みは企業というより協会や連盟といった団体が仕切る形ですか。また、それぞれの大会はどのように開かれているのでしょう。

 オリンピックや東アジア競技大会などで採用されれば、それぞれの国の連盟が選手を送り込む形になります。ふだん各地で行われているゲームの大会はそれぞれ勝ち抜いた選手や主催者からの招待という形で開かれますので、連盟などの団体はあまり関わっていません。主に、それぞれのゲームを開発した会社が主催をしたり、イベントとして開催したいと要望を受ける場合もあります。

高額優勝賞金1億円

―― どのようなゲームがeスポーツとして人気があるのでしょうか。

シャドウバースは対戦型のカードゲームなので、eスポーツとして大会を開きやすいですし、「BLAZBLUE」や「ストリートファイターⅤ」などの格闘ゲームもあります。海外タイトルで人気なのは「PLAYERUNKNOWN'S BATTLEGROUNDS(PUBG)」などのバトルロワイヤル系のFPSや普通のFPS、「リーグ オブ レジェンド(LOL)」のように5人対5人で戦うMOBAの人気が高いです。

―― 盛り上がるのはチーム戦ですか。

 そうですね。シャドウバースも本来1対1の対戦ゲームですが、3対3のチーム戦にしています。チームのほうが個性が出たり、ドラマが生まれやすいですし、企業もブランディングしやすく、観客も楽しみやすいのだと思います。

シャドウバースのゲーム画面。対戦型のカードバトルだ。©Cygames,Inc.

―― 観客はどのように楽しむ人が多いのでしょうか。

 どのイベントにおいても観客数は全体的に増えています。プロ野球でも野球をしながら観るのも好きな人がいれば、野球の経験がなくても観るのが好きというファンもいます。eスポーツも最初は自分もプレイして上手い人のプレイを観て楽しむ人が多いと思いますが、プロ野球のように自分はしないけど観るのが好きという人が増えて発展していくのではないかなと。

―― とはいえ、まだまだeスポーツを一般のスポーツ大会に入れることに抵抗を感じている人は多いです。

 いち企業がやれることには限界はありますが、世界大会などで大きな賞金が出るようになれば地位の向上の1つになると思っています。我々よりもむしろメディアのほうが訴える力が強いので、選手の努力やがんばりを知ってもらえるようになれば、変わってくるのではないでしょうか。

―― 賞金といえば、12月に行われるシャドウバース世界大会は優勝賞金が100万USドル(約1億1000万円)と高額ですね。

 世界には優勝賞金20億円の大会もありますが、これだけもらえれば人生が変わりますよね。観る側も、この人が勝てば1億円もらえると思うと、興奮はあるでしょう。実際、プロeスポーツ選手といっても、ほとんどの選手にとっては、1億円は生涯かけても獲れる金額ではありません。

海外で人気のあるタイトルでなければ高額賞金はつきませんし、日本人選手はまだ勝てていないですね。

―― ということは企業からのスポンサードやチームに所属しないと食べていけない。

 いまはそうですね。海外の選手も賞金ではなく、スポンサードで食べています。賞金で食べていける人はごくごく一部。プロリーグには、リーグ自体のスポンサー収入があれば選手にも分配されますので、ある程度もらえるかなという感じです。

―― 市場規模で言えば、まだまだ小さい。

 年々大きくなってきています。だいぶ変わったかなと思うのは、若い人たちが、ゲーム実況からゲーム大会へと見方の幅が広がってきています。ゲーム実況は動画サイトなどでゲームをプレイしている様子を配信しているのですが、そこから大会で上手い人のプレイを観るようになってきました。ゲームが自分1人で楽しむものから、みんなで楽しむようになり、観て楽しむようになり、応援して楽しむようになった。他のスポーツと一緒ですよね。

eスポーツを観戦して楽しむ

―― Cygamesとしてはどう取り組んでいきますか。

 大会があって、プレイヤーがいて、観る人がいる。この3つすべてを注力していかなければいけないと思っています。ふつうにゲームで遊ぶ人と、大会に出る人はまったく違いますから、参戦したい人をどうフォローしていくか、参戦しやすい形にしていくかは重要です。賞金制の大会だけでなく1つのコミュニティとして集まって対戦を楽しめる場づくりからしっかりサポートをしていく。そこから競技性のある大会への道筋を作り、選手をサポートし、大会を開催する。それを配信してどのように面白く見せるかまで、一気通貫でやっていきます。そうしなければeスポーツは成り立たないと思います。

 また、今後も他のゲームのプロプレイヤーのスポンサーを通じてゲーム業界の発展に寄与していきたいと思っています。

―― 今後、eスポーツの市場としては、どう広がっていきますか。

 日本は流行る時は一瞬で流行ります。いまはその下地ができてきたという感じですね。日本は娯楽が多くて、面白いものも多く、遊びを考える天才の国だと思います。海外は娯楽が少ない国や、スポーツが一番の娯楽という国が多いため、楽しみ方が近いeスポーツも流行りやすい環境にありました。日本は楽しいものが多くて、新しい娯楽が流行ってくるのは大変ですし、時間もかかります。そのなかで、最近は体験型の娯楽が流行り始めていて、コンサートやライブにも、実際に行って体験するようになっています。スマホやインターネットで観るだけのものに飽きてきているんです。その場に行って共感したり、体験をするという娯楽に、eスポーツは需要として合っています。eスポーツも従来のスポーツと同じように観戦して楽しめることが伝わっていけば、市場も広がりも加速していくのではないでしょうか。

(聞き手=本誌編集長・児玉智浩)

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