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2019年02月号

IR CLIP 幸楽苑ホールディングス

(証券コード 東証1部 7554)

業績V字回復!~さらに働き方改革推進で 従業員の満足度と顧客サービスを レベルアップ

いつ行っても営業していて、同じ価格で食べられることから、チェーン展開する飲食店をよく利用する人も多いはず。消費者にとって便利でありがたい存在だが、それを維持する「人」が足りない。

 厚生労働省東京労働局が発表している「求人求職バランスシート」の2018年10月分のデータによると、東京都での「一般常用」の「飲食物調理の職業」の求人倍率が5・82倍、「接客・給仕の職業」に至っては同じく9・07倍。「パート常用」でも数値は大きく変わらず、人手不足が深刻だ。

 このままでは優秀な人材が集まらないと、立ち上がったのが幸楽苑ホールディングスだ。子会社の幸楽苑が、ラーメン店「幸楽苑」を国内外に直営、フランチャイズを合わせて524店(18年9月末現在)と、ステーキチェーン店の「いきなり!ステーキ」16店舗を運営する。働き方改革の広がりに即し、新たな人事評価制度を導入するほか、18年12月31日の午後3時以降と翌1月1日を、大多数の店舗で休業にすると発表した。これらを従業員は好意的に受け止めているようで、ワークエンゲージメント(仕事への熱意、やりがい)を高め、最終的には業績のさらなるアップへつなげる考えだ。

確かな業績V字回復

 主要な繁華街やロードサイドなどに出店している幸楽苑は、種類豊富で手ごろな価格のラーメン中心に、餃子やチャーハンを合わせた定食類などを提供。塩分を減らしたラーメンを開発するなど、顧客ニーズを発掘するメニュー展開も持ち味で、サラリーマン層からファミリーまで、幅広い集客力を持つ。だが、16年に発生した食品の安全・安心に関する問題や、「価格」より「価値」を重視する商品戦略の推進が、一部の顧客には「事実上の値上げ」と映ったことで、一時的に客足が鈍った。

 その後、店舗内の調理器具や作業内容の見直し、工場加工の拡大によって、店舗従業員によるヒューマンエラーに起因するトラブルの芽を摘んだ。また、危機管理を指揮する「カスタマーサポート室」を設置し、食に対する安心・安全への管理も徹底した。また、3つの取り組みからなる「新幸楽苑」戦略を推進。「味の改革」では、「中華そば」シリーズ、餃子など主力商品のブラッシュアップや各地の〝ご当地ラーメン〟などを提供する期間限定商品の展開を強化した。

「筋肉質な経営」では、毎月1億円のコストがかかっていた餃子無料券などのチケットを廃止したほか、オウンドメディアやSNSを活用した販促やマーケティングを展開。より実効的に顧客開拓や休眠顧客を掘り起こす施策へとシフトしている。

「保有資産の活用と店舗ポートフォリオの最適化」では、自社競合が起きていた店舗を中心に、一部をステーキ専門の飲食チェーン「いきなり!ステーキ」に転換。ラーメンとは異なる客層の開拓に寄与しているほか、存続した幸楽苑店舗も平均15%の客数増加がみられるなど、相乗効果を生む。

「『新幸楽苑』戦略で客数前年比が戻り、今期は当初売上384億円、経常利益5・8億円という目標を立てましたが、第2四半期までに経常利益9・3億円を達成。事業環境が好転していると感じます」(会社側)

 なお、第2四半期末までに、業績見通しを売上393億円、経常利益は11・1億円と上方修正している。

 一方、働き手に魅力的な職場環境を提供し、長く勤めてもらうことは、業績アップに通ずる経営課題となっている。

64年の歴史で初めて…

 そこで幸楽苑ホールディングスでは、クラウド型人事評価システムを提供するあしたのチーム(東京都中央区・髙橋恭介会長)と提携。労働時間や労働環境の改善はもちろん、これまでマネージャーなど上司の主観で行われていた従業員の評価を、人工知能(AI)を活用した客観性の高いものへ変えていくことにした。

19年1月から3月までの期間、幸楽苑の働き方や評価制度を分析し、その結果を基にオリジナルの人事評価制度を構築。4月をめどに、AIを活用した人事評価制度の運用を始める予定だ。

 さらに、18年12月31日の15時以降と翌1月1日は大半を店休日とすることを決めた。これは、1954年の創業以来、初めてのこと。飲食などのサービス業にとって、書き入れ時ともいえる期間の店休だが、従業員からは「家族一緒に正月を迎えられる」と、感謝の声が多数あがっている。

「飲食業界の新しい働き方提案、新評価制度の構築によって、ES(従業員満足)を向上させ、それをCS(顧客満足)につなげていきたいと考えています」(会社側)

 前身の「味よし食堂」の創業者の精神には、顧客や取引先と併せて「働く人たちを大切にする」ともうたわれている。その愚直な実践こそ、64年にわたって安定的に会社を拡大してこられた原動力だろう。

2019年02月号 目次

試し読み
商用化に入ったブロックチェーン SBIはどう関わるか
IR CLIP 幸楽苑ホールディングス
WEB広告業界に新展開 大型経営統合の謎
キャッシュレスによる 需要喚起効果への期待
“小売の革新者”の試行錯誤 アマゾン食品・飲料ストアの10年
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