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2019年02月号

キャッシュレスによる 需要喚起効果への期待

沖田貴史 SBI大学院大学 特任教授

おきた・たかし 1977年石川県生まれ。98年一橋大学在学中に、サイバーキャッシュ株式会社(現ベリトランス株式会社)の立ち上げに参加。2005年から10年間、代表取締役を務め、香港上場やアジア展開を加速。2016年5月より、SBI Ripple Asia株式会社 代表取締役。主な公職に、金融審議会専門委員など。

12月4日、Twitterなどのソーシャルネットワーク上に、「PayPay(ペイペイ)」というキャッシュレスに関する耳慣れない言葉が駆け巡った。

PayPayとは、ヤフージャパンとソフトバンクとの合弁会社であり、インドで普及するスマートフォン決済サービスであるPaytm社の技術を活用し、日本でもQRコードを用いた決済サービスを展開する企業である。

決済サービスは、10月から展開しており、それまでもユーザー登録をするだけで、利用者には500円相当のプリペイドバリュー(電子マネー)が付与され、支払金額の0.5%相当のポイント還元や、5000円の入金で6000円相当額に増額チャージされるなどのバラマキ型の利用促進キャンペーンが行われていたが、同日からは総額100億円を利用者に還元するという、過去に例を見ない大型のキャンペーンが開始されたのである。

キャンペーンの詳細としては、利用額の20%相当がポイントとして返金されることに加え、利用の40回に1回は全額が返金となるというものである。

ヤフープレミアム会員やソフトバンク・ワイモバイルのスマホユーザーは、一層返金確率が上がる仕組みとなっているが、1人あたりの還元総額は月5万円までという上限があるため、累計10万人以上が利用するだろうという規模である。利用できる加盟店としては、キャンペーン開始日より、ファミリーマートが決済受付を開始し、また3000人規模の営業マンを擁し、順次拡大していく予定である。

キャンペーン発表の記者会見には、テレビCMに出演するタレントだけでなく、主要加盟店の経営陣も参加し、「1000億円を使い切ったら、追加のキャンペーンを実施するのか?」という発言も出るほど、鼻息の荒さが伝わるものだった。

当初は、キャンペーンにより、PayPayのみならず、QRコード決済の利用者層が拡大することに加え、コンビニ等での日常的な利用により、利用体験が定着するものと考えられた。

しかし、蓋を開けると、高額商品の購入が可能なビックカメラやヤマダ電機といった家電量販店での買い物、特に普段は割引の少ないアップル製品に集中した模様だ。

実際、筆者が週末に、大手家電量販店を訪れ、聞き取りした際には、「キャンペーン開始直後の平日は、9割近くがPayPayを利用していた」とのことであった。とはいえ、キャンペーン効果は大きく、PayPayという名前とともに、QRコード決済の利用経験者は大きく増えた。

また、決して良いことではないが、キャンペーン初日には、サーバーがダウンし、最初の週末にも、緊急メンテナンスがあり、システムが使えない時間があったほどだ。一連の騒動は、PayPay狂想曲とも呼べるが、キャッシュレスとポイント還元により、需要喚起がなされたことを証明した。

消費増税からオリンピックまでの期間に、政府は、キャッシュレス決済が行われた際には、5%を還元する景気喚起策を検討しているという。この取り組みに向けて、民間主導で、大きな弾みがついたとも言えよう。

2019年02月号 目次

試し読み
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キャッシュレスによる 需要喚起効果への期待
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